賃貸人都合の原状回復工事に対して裁判所の判断は?

平成29年敷金返還請求事件

原告:「甲」

被告:「乙」

甲の代理人弁護士:「丙」

甲、丙の技術アドバイザー:萩原大巳、小川友幸 (以下、「RCAA」という)

乙の指定する原状回復元請け業者:「O組」

甲はM&Aに伴い経営者が変更になり、本社所在地を東京に移転する事が決まり、移転に伴い賃貸借契約を解約、明け渡しに伴い原状回復義務を履行する事となり、乙の指定業者であるO組と数回の値引き交渉を実施。

結果、7,390,000円(税別)が7,100,000円(税別)になったが「この金額で直ちに発注して下さい。発注して頂けない場合、原状回復が完了できませんので賃料管理費の倍額の損害の対象となります」と、乙およびO組から圧力をかけられる。

甲の親会社である法務責任者に相談した結果、一般社団法人RCAA協会(RCAA)の会員であり、運営母体である株式会社スリーエー・コーポレーション(3AC)の萩原大巳、小川友幸を紹介され、そのサポートのもと甲乙が2回の面談協議をするも協議は決裂した。甲の親会社とRCAAの意向で裁判やむなしとの方針が決定し、原告として甲は乙を告訴(大阪地裁)。

判決の結果は?

7,390,000円の原状回復費用 ➡ 3,500,000円で合意

3,890,000円の敷金が速やかに原告に返還された。

裁判官のすすめにより、裁判官立ち合いのうえ合意和解した。

※全て税別

何が問題なのか?

  1. 賃貸借期間中、空調設備を環境対応の空調設備に改修。費用は全て乙が負担した。
  2. 電気その他設備の原状(B工事)はどうなるのか?
  3. 賃貸借契約の原状回復特約がない、どこまで原状回復するのか?法的根拠はあるか?(原状回復義務を逸脱)
物件名称 Kビル6階
賃貸人
指定業者 O組大阪支店
面積 359.55㎡/108.76坪
用途

事務所

(敬称略)

問題点の抽出

原状回復費適正査定にあたり、RCAA協会の専門家萩原大巳、小川友幸、電気設備担当技士城ノ下英茂は、賃貸借契約書から下記の問題点を抽出した。

  • 本件の原状回復義務は、賃貸借契約書(以下、「本契約」という)第21条(原状回復と明渡し)期間満了、解約等により賃貸借契約が終了するときは、甲は賃貸借契約終了日までに次の各号の工事を自己の費用をもって完了し、賃貸借物件を契約当初の原状に回復し乙に明け渡さなければならない。
  1. 甲所有物件の収去(甲の収去権)
  2. 甲が賃貸借物件内に設置した造作、間仕切り、その他の設備の撤去
  3. 第12条に定める修繕
  • 賃貸借期間中、賃貸人(乙)の要望により、空調設備の改修工事を実施。その際、電気その他設備も更新している為、天井に取り付けてある空調、電気設備の原状が不明。
  • 建築工事、床、壁、天井をどこまで原状回復するか。原状回復基準図書(貸方基準図書)、仕上表、原状回復確認書(以下原状回復特約という)がない為、O組の見積の法的根拠が不明であり、原状回復義務を逸脱しているように思われた。
  • 賃借人(甲)の所有物、造作、諸設備の収去(撤去処分)は、甲の推薦業者で施工可能である。甲推薦業者で施工する為、原状回復見積から撤去工事を削除した見積で乙、O組に要求した。

論点の構築

  1. 改修工事完了時が原状である、と賃借人(甲)は主張。貸方基準図書がなく、借りた時の原状も曖昧。従って改修工事修了が電気その他設備の原状確定であるという主張でロジックを構築した。
  2. 建材の商品ナンバーもわからず原状回復内容のわかる特約が不明。情報開示と説明責任は判例にもある通り、賃貸人の義務であり責任である事を主張した。

協議の重要事項

  1. 賃貸人(乙)より原状は5階の原状回復終了物件を原状とするという乙の都合の良い回答であった。
  2. 原状回復特約はない。今までのテナントは、賃貸人の指示通りの原状回復を実施しているという乙の都合の良い回答であった。
  3. 収去権。解体撤去工事(収去権)は、賃貸人(乙)が渋々認め、甲に大阪本社がある(株)エス・ビルドをRCAA萩原大巳の紹介、(株)エス・ビルドで完了した。

全面勝訴・和解合意

初回原状回復見積金額 7,390,000円
合意金額 3,500,000円
値引金額 3,890,000円
値引率 52.64%

(全て税別)

上記の結果は、裁判官より和解をすすめられ甲と乙で合意した内容である。

主張がすべて認められた結果となった

原状確定もされておらず、原状回復特約も不明、賃貸人(乙)の都合の良い主張しかせず、あまりにも理不尽である為、裁判で争う事を甲、甲の代理人丙で決定した。

結果、上記1,2,3の甲の主張が全て認められた和解提案となった。

 

 

本件担当技術者・記事作成者

査定員 萩原大巳

萩原 大巳

一級建築施工管理技士

宅地建物取引士

小川友幸

小川 友幸

一級建築士

管理建築士

城ノ下英茂

城ノ下 英茂

第一種電気工事士

建築設備士

資産除去債務査定員

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