重層構造請負体制の工事は大幅な費用削減が期待できる!?

原状回復費


原状回復工事が高額になりやすい要因として重層構造請負体制があります。

重層構造請負体制とは、建設業において、工事全体の総合的な管理監督機能を担う元請から、複数の下請けを経て施工されることを言います。

中間的な施工管理や労務の提供、その他の直接施工機能などを、いくつもの下請けが行うことでコストが雪だるま式に膨れ上がってしまうのです。

今回ご紹介する事例は、まさに重層構造が原因で原状回復費が高額に見積もられていました。

クライアントである賃借人も驚いた最終合意額。いくら圧縮できたのかをご紹介しましょう。

 

賃借人の概要

賃借人 株式会社シンプレクス・リアルティ
テナント

東京都港区 住友生命赤坂ビル7階

7階:310.14㎡/93.81坪 

地下2階:108.01㎡/32.67坪

計126.48坪

賃貸人の概要

賃貸人 住友生命保険相互会社
ビル管理業者 株式会社スミセイビルマネージメント株式会社
指定業者 鹿島建設株式会社

 

実績

初回見積金額 15,300,000円
再見積 8,500,000円
合意金額 8,000,000円
削減額 7,300,000円
削減率 47.7%

※全て税別

業務拡大のため移転を決定したシンプレクス・リアルティ社に多額の原状回復費の見積もりが・・・

業務拡大のため移転を決定したシンプレクス・リアルティ社に多額の原状回復費の見積もりが

シンプレクス・リアルティ社は好調な業績を背景にスタッフの強化と、さらなる業務拡大のためにより大きな物件への移転を決定し、退去に向けて原状回復の見積もりを出してもらいました。

初回見積で提示された額は税別で1530万円でした。

シンプレクス・リアルティ社は不動産売買仲介業ということもあり、社内に建築、設備の専門家が在籍しています。また、リフォームの協力業者もあったため、原状回復の内容、費用も合理的に見ることができる会社でした。

シンプレクス・リアルティ社は1530万円という原状回復費はあまりに高額であると判断し、適正額で工事ができないかとWEBで情報収集したところ、一般社団法人RCAA協会に相談してみることにしたのです。

RCAA協会会員の(株)スリーエー・コーポレーション(3AC)と面談し、原状回復費用の適正化について詳細説明を受け、業務委託することを決定しました。

 

シンプレクス・リアルティ社がRCAA協会を選んだ理由

シンプレクス・リアルティ社がRCAA協会を選んだ理由はふたつあります。

そのひとつが「査定書の妥当性」でした。

RCAA協会会員の3ACが提示した査定額は900万~1000万円でした。この額が、先に述べたシンプレクス・リアルティ社内部の建築士の査定(1000万円未満)と、ほぼ同額だったことから、信憑性が高いと判断したのです。

もうひとつの理由が「コンプライアンス」です。

弁護士法第72条で定められている非弁行為(弁護士資格のないものが報酬を得る目的で弁護士の業務を行うこと)の完全回避はシンプレクス・リアルティ社が発注する際の絶対条件でした。

RCAA協会では、在籍している法務担当弁護士の管理下で業務を実施し、この問題に完全対応しているため、この点でも信用できるとシンプレクス・リアルティ社は判断してくれました。

 

合意までの流れと、2つの削減ポイント

賃借人の専門家とともに現地調査を行い、原状回復根拠図書を作成。労務費、材料費、現場経費、会社利益を国交省指導の労務単価に基づいて積算し、エビデンスとしました。

このエビデンスをビルオーナー側に提示し、2回の協議を経て、税別800万円で円満合意しました。

最終的な削減額は730万円。割合に直すと最初の見積額から47.7%削減できたことになります。

 

ここまで大きく削減できた理由としては、エビデンスの重要性ももちろんですが、このほかにも2つのポイントがあります。

ひとつは「重層構造による請負体制の弊害」、もうひとつが「他ビルとの比較」です。

個別にみていきましょう。

 

重層構造による請負体制の弊害

今回の事例は、PM(賃貸経営管理業務)BM(ビル管理運営)は東京ビジネスサービス株式会社社という企業が担当し、原状回復工事は指定業者であるゼネコンが元請けになり、その下請けとして本物件の建物維持(ビルメンテナンス)の会社、電気、空調、防災、その他設備の専門業者がいるという多重下請け構造になっていました。

上記の様な請負体制はビルメンテナンスのビル運営ルールに多く見受けられますが、実質ビル管理会社、指定業者、サブコンという三重請負体制によって費用が高騰します。しかしその費用は賃借人(テナント)が負担するので、オーナーはコストカットに悩むことがありません。日本においては、Aグレード、スーパーグレードビルは、全て上記の体制といっていいでしょう。

本来であれば、ゼネコンは、協力業者の調達能力に長け、TQCをコントロールすることが期待される存在です。しかし実際問題として、下請け会社、サブコン、BM会社、そして元請けであるゼネコン自身の利益が原状回復費にコストオンされるので、当然ながら費用が高額になってしまうのです。

このため、費用面で賃借人(テナント)とトラブルに発展するケースが後を絶ちません。本件の構造も同じ仕組みといえます。

今回の事例では、対策として、日本の建設業者の請負基準を援用しました。そこでは多重請負構造についての禁止が明記してあります。

こうした重層構造による請負体制を解消させる合理的な理由が、強力な説得力を生みます。

 

他ビルとの比較

他ビルとの比較

本物件は、もともとのPM・BMが賃貸人の系列会社や関係の深い別会社でした。入居工事(原状変更、B工事)は、その“もともとの会社”が実施していたのです。そこで、原状回復工事に同社の単価に当てはめてみました。すると、950万~1000万円でした。

また、現在のビル管理会社が別のAグレードビルでPM、BMをやっているビルの原状回復の費用に当てはめると約800万~880万円でした。

こうした比較も、今回の原状回復費における合理性の欠如を指摘する“武器”になったのです。

 

この結果、賃貸人の不動産部責任者が決断し、800万円で円満合意できたわけです。

後日、原状回復工事施工中の現場を見に行きましたが、元請けは指定業者だったゼネコンではなく、内装材メーカー系列の会社になって施工していました。

ゼネコンを使うとどうしても工事費が高額になります。費用を抑えるため、今回はオーナーである賃貸人の判断によって指定から外れたということです。

 

シンプレクス・リアルティ社の担当者様からいただいたコメント

シンプレクス・リアルティ社の担当者 K氏
male

1000万円で合意できればベストと考えておりましたが、1530万円⇒800万円となり驚いております。削減できた730万円は移転先の入居工事を充実させる設備投資として使わせて頂きました。おかげさまで、グレードの高いオフィスとなることができました。本件を担当して頂きました専門家の皆様、本当にありがとうございました。RCAA協会のご多幸を祈願いたします。

 

 

査定者の所見

協会会員査定員 萩原大巳

原状回復工事の重層構造は、どう考えても、時代にそぐわないものと言わざるを得ません。昨今のネット社会においては、囲い込むことよりも、公平・透明なオープンソースの時代になっています。

したがって、指定業者制度の見直しは社会的な急務ではないでしょうか。

以下、参考として重層構造の是正について公的な指導内容をご紹介します。

RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション
査定員 萩原大巳

 

※重層下請け構造の是正について

国交省、建設業監督部局、地方整備局都道府県は、上記是正について下記の事項を指導している。

 

建設業界の自主的な取り組み

元請け、一次下請け、二次下請け、三次下請けなど、元請け、下請け業者との施工能力の重複をやめ、同じ施工能力を有する下請けより、品質、コスト、起動力、管理能力を数値化し、優良下請け企業のみ協力業者として優先発注する事により、元請け、下請けの目標設定と目標達成の取り組みの内容を徹底し可視化すること、又、同じ施工業種で一次、二次、三次、元請けなど重層請負にて各階層の会社の管理、経費、営業経費がコストオンされコスト高になることは市場原理に反する。特に何らかの理由により、元請け会社、協力業者が寡占状況もしくは指定により、公正取引上優位な立場にある場合、重層請負によるコスト高を施主に負担させることを上記省庁は禁止事項として指導している。

  1. 雇用、請負に関するルールの徹底

請負、雇用の適正化について、どのように徹底していくべきか

・一括下請けの禁止

・主任技術者の配置

・労働者派遣、偽装請負の禁止(周旋業者、口利き業者のリベートのコストオン)、周旋業者の介入の禁止、権力者による口利きの禁止

請負の際の遵守事項(旧四会連合約款に基づく)

 

一般社団法人RCAA協会が、上記のような方針実現の一助となれば幸いです。

お問合せはこちら

 

 

コメントは受け付けていません。