「定期建物賃貸借契約の中途解約損害金」と「原状回復費」のダブルパンチで債務不履行の危機

新オフィス選定・契約の基本4項目

定期建物賃貸借(定借)は、更新がなく賃貸借期間満了により契約が終了する賃貸借の一形態です。継続の場合は、賃貸人承諾のもと再契約となります。

原則として中途解約はできず、解約合意しても、契約満了までの家賃は賃貸人に家賃請求権があります。したがって、期間満了まで空家賃を損害金として請求されます。移転先、移転元の家賃がダブルで発生することになるわけです。それに加えて、もちろん原状回復義務も追及されます。

欧米型の定借は、「解約不可という大きなリスクがあるということを経営者は念頭に置く必要があります。(借地借家法第38条に基づく)

今回は、定借で借りていたオフィスを縮小移転することになった会社の事例です。

実績

初回原状回復見積り

28,512,000円

合意

15,600,000円

削減額

12,912,000円

削減率

45.28%

定借中途解約損害金

7,798,876 → 3,610,592円

※全て税別

賃借人の概要

賃借人 株式会社エストコーポレーション
住所 東京都千代田区 
テナント

九段ファーストプレイス

6階810.68㎡/245.23坪

 

賃貸人の概要

賃貸人 株式会社第一ビルディング
ビル管理運営 同上
賃貸経営管理業務 同上
指定業者 前田建設工業株式会社

 

 

定借からの移転はまとまった費用が必要に! 

移転

エストコーポレーション社はハイグレードのビルを定借によって有利な条件(一部賃料免除)で借りていました。経営は好調でしたが、取引先の経営不振のあおりをくらい、家賃負担が大きくなってしまったため、定借を解約し、縮小移転することになりました。

エストコーポレーション社は賃貸人へ中途解約のお願いをしましたが、定借期日満了日までの家賃は発生するということで、定借の中途解約は不可でした。顧問弁護士に相談しましたが、賃貸人の主張は正当な権利の行使という回答です。

困ったエストコーポレーション社は、せめて原状回復費を抑えるために、指定業者へ原状回復費用を安くしてもらえないか交渉しましたが、良い回答はもらえません。

 

移転元を退去するだけで、損害金(賃料2カ月分)と原状回復費を合わせて約3631万円がかかることになります。敷金を約2888万円預託していましたが、およそ743万円不足してしまいます。しかも原状回復費は、指定業者に前払いしなければいけませんでした。

上記費用の他、移転先の内装、設備、ネットワーク、引越しなどの移転費用が必要なため、エストコーポレーション社は急激に財務状況が頻拍する状況になってしまいました。

 

八方塞がりになってしまったエストコーポレーション社は、Webで原状回復について調べていくなかで、一般社団法人RCAA協会を発見しました。同協会を運営する株式会社スリーエー・コーポレーション(3AC)は、エストコーポレーション社の取引先もクライアントであることから信用できると判断し、サポートを依頼しました。3AC代表の萩原と面談した際、このような定借のケースの和解案を提示してもらえたことも大きなポイントでした。

 

エストコーポレーション社の大きな負担を一気に解決する魔法の一手 

今回の事例の対応としては、賃貸人にエストコーポレーション社の財務状況を正直に話し、原状回復義務を履行したいが、債務不履行のリスクがあるということを伝えました。この時のエストコーポレーション社では、移転先、移転元の家賃の二重負担は大きすぎたのです。

そのため、まず原状回復工事ではなく、原状回復負担金というスタイルで精算してもらうよう要望しました。

原状回復負担金にすることにより工事期間の家賃負担がなくなります。また、定借満了日まで使用することにより移転先、移転元の家賃の二重負担を回避しました。

次に、原状回復費を抑えるための交渉をしました。エストコーポレーション社の移転元の内装設備・セキュリティなどはグレードが高く価値のあるものです。そこで、賃貸人承諾のもと、居抜き(原状回復義務承継)を検討してもらいました。結果、内装設備の一部を残す(部分原状回復)で決着することができました。

こうした粘り強い協議によって、当初エストコーポレーション社に求められていた退去に伴うコスト約3631万円が、約1927万円まで削減されました。敷金と相殺しても赤字だったのが、およそ961万円返ってくることになったのです。

 

 

エストコーポレーション社からいただいたコメント

エストコーポレーション社代表 浅間 
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当初、敷金との差し引きで743万円が不足している状況が、961万円の返還が実現したときは驚きました。差引1704万円のプラスです。また原状回復費用も敷金より差し引く形になったため前払いではなくなり、魔法のようでした。

今は業績もV字回復し、スタッフの絆、コミュニケーションも良くなったと思います。逆境は会社を強くしなやかなものに鍛えてくれました。ピンチはチャンスと言いますが、今回のピンチを乗り越えた経験は私の財産だと思います。

本当にスリーエー・コーポレーションの皆様には、感謝感激です。

これをご縁にこれからも賃貸、建築のご相談ご指導のほど宜しくお願いします。

 

査定者の所見

協会会員査定員 萩原大巳

今回の事例のような対応は、欧米だとよく行われています。
先進国で賃貸契約書に全て原状回復を記しているのは日本だけです。また賃貸人の指定する業者以外、施工不可とする“指定業者制度”を採用しているのも日本だけです。
これらには物件のクオリティを一定に保つというメリットもありますが、当然デメリットもあります。

具体的なデメリット例を挙げると、築浅10年のAグレードビルに入居し、10年借りた場合、原状回復する時は20年前の建築、設備に復旧することになります。
テクノロジーの急激な進歩によりビルのIT化が進み、インテリジェントビルとなっている昨今、ビルオーナーは将来テナントに選ばれる原状回復(リニューアル)を実施することがベストではないでしょうか。

このためには、原状回復、移転先B工事などを時代に合った契約にし、「公平性と透明性のあるものにしなければいけない」とRCAA協会は考えます。記事では「魔法の一手」と表現しましたが、公平性と透明性を追求した結果であり、今後のスタンダードとなりうるのです。
クライアント様に喜んで頂くことが私たちのモチベーションであり、ミッションです。リーマンショック後は、東証一部の人材派遣会社を上記のような対応でサポートした経験と実績もあります。

今後も今回の事例と同様のケースは多発することが予測されるため、当協会のような経験と実績に裏打ちされたサポートは存在感を増していくことでしょう。

RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション
査定員 萩原大巳

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