予想外の高額な原状回復見積を半額で合意!
アプリケーションシステム企画・開発を専業としているA社は、グループの統合により東京都港区のオフィスを退去することになりました。しかし、管理会社から提出された原状回復の見積もりが予算を大幅に超える1,595万円(税込)でした。
工事の知識もないため、適正な価格を求めるために一般社団法人RCAA協会に相談しました。
概要
賃借人(クライアント) | 株式会社A社 |
物件名 | 東京都港区 某ビル |
用途 | 事務所 |
賃貸借面積 | 132.22㎡/40坪 |
賃貸人 | 株式会社B |
PM管理会社 | C株式会社 |
「原状」が不明確なオフィス
RCAA協会は賃貸借契約書や図面を元に無料査定を行っていますが、今回のフロアの「原状」に関する資料がありませんでした。
RCAA協会は管理会社に「原状」に関する資料を提出するよう要請しましたが、管理会社は持っていないと回答しました(賃貸人も持っていませんでした)。これは賃貸人と管理会社の資料管理の不備です。
明確な「原状」が分からない工事費用をテナントが負担しなければならない理由を賃貸人側に指摘しました。その結果、最初の1,595万円から798万円へと約50%減額することに成功しました。
交渉結果
初回見積 | 15,950,000円 |
合意金額 | 7,980,000円 |
削減額 | 7,970,000円 |
削減率 | 50% |
(総額表示)
ご担当者様からのコメント
事務所を借入時に、弊社が賃貸人、または管理会社から原状がわかる書面の提示や説明を受けていなかったことが、賃貸人から工事費の大幅な減額を勝ち取ることができた大きな理由だと思います。RCAA協会には短時間の中、迅速に対応していただき大変感謝しております。
(株式会社A社 オフィス移転責任者 様)
本件の回答 ~萩原 大巳 ワンポイントアドバイス~
原状が分からない場合において、原状回復工事を負担する義務が存在するのでしょうか?
2020年4月に施行された改正民法第621条「賃借人の原状回復義務」を考慮すると、
- 原状を明確に定め、賃借人に理解させる責任は賃貸人にあります。したがって、原状を証明できない工事項目には法的根拠がありません。
- 原状回復適正査定の結果、原状回復工事は半額で円満合意し、法的根拠のない原状回復工事項目を削除したことで、15,950,000円から7,980,000円になりました。
- 注意!原状回復が完了しないと敷金の返還はされません。改正民法では第622条の2第1項において、「敷金の定義の明文化」「敷金の返還時期の明文化」を賃貸人の責任と定めました。ですので、「敷金を○月○日速やかに返還してください」と書面で通知することを忘れずに行ってください。