世界から多くのビジネスマンを引きつけてやまないアメリカ。彼らがアメリカで一定以上の規模のビジネスをしようと思ったら、オフィスの賃貸は避けられないでしょう。
今回は、アメリカにおける原状回復を含めたオフィス賃貸事情について解説したいと思います。
リモートワーク定着率は9割に迫る「フリーランサー(ギグワーカー)というワークスタイル」
アメリカ合衆国(United States of America )は、50州と連邦政府直轄区により構成される連邦国です。
各州に州政府があり、合衆国憲法は各州に共和政体を保証しています。つまり、州は独立した知事を公選で選び、独立した司法府、立法府を持つ日本の不動産取引資格「宅建士」に当たる資格は、個人では「リアルエステートパーソン(セールスパーソン)」、会社では「リアルエステートブローカー」といいます。
世界から人、物、金、情報を引きつけてやまない世界の中心がアメリカ合衆国、と言っていいでしょう。
州の中でも、3,600万人超の圧倒的人口、州GDP NO.1はカリフォルニア州です。FAGAもここで生まれました。Netflixもカリフォルニア州です。
中でもサンフランシスコの物価上昇は激しく、12万$で低所得者に分類されます。日本円換算で1,400万円です。
アメリカ西海岸は世界から優秀な人を惹きつけます。FAGAM +Netflix、Teslaなど、スタッフの4割超はアジア系です。
新築プレミアムが付き、次の更新で家賃が下がる日本と違い、コロナ禍でも家賃上昇を抑えるため、レントロールの上限を3%や5%などに定めています。
リモートワーク定着率は9割に近づき、専門性の高いフリーランサーは、全米で5,800万人を超えます。
アメリカにおけるオフィス賃貸事情
アメリカの賃貸借契約
アメリカの賃貸借契約は定期建物賃貸借契約で更新がありません。全て貸主・借主の合意のもと、定期建物賃貸借契約の再契約となります。
「原状回復」「B工事」などの明確の決まりもありません。ましてや、指定業社という独占的な事項もありません。
定借契約のリスク回避としてサブリースを活用しています。リユース、リサイクル、カスタマイズが当たり前のソフトローの連邦国家です。
貸主・借主双方に不動産の専門家、デザイン設計の専門家が一任され、賃貸条件、デザイン設計など協議を実施しています。最近では、デジタル環境・環境対策を含めてワークプレイスストラテジストが活躍しています。
先進国で、貸主・借主の双方から報酬を頂く双方代理が違法ではないのは日本だけです。厳格な原状回復、B工事の指定なども日本だけです。原状回復、B工事という英単語が無いのはその証です。
アメリカは内装工事や原状回復はどういう認識か?
内装工事の費用は貸主負担が一般的のようです。
ただし、費用の割合については全額の場合もあれば一部だけにとどまる場合もあります。日本の場合と同様、契約書をしっかり確認することが重要です。
資本主義の代表ともいえる米国は、賃貸人も賃借人も「事業を行うため」に物件を賃貸借します。したがって投資資本の回収を賃貸人、賃借人とも最優先に検討します。外観、内装設備グレード、資金、家賃、管理費も全て、事業をするための投資資本です。イニシャルコストとランニングコストを全て検討し、賃貸借契約の協議を貸主、借主とも代理人に委任し、合意、契約締結するのが一般的です。まさに契約社会といえるでしょう。
そして原状回復費は不要というケースが多く見られます。もちろん、厳格に要求されることもあります。これもやはり契約書で必ず確認したいポイントです。
米国では、築浅5年のビルを借り、仮に5年借りた場合、原状回復は10年前に回復する工事になります。当然、合理的な米国人は、将来のテナントに選んでもらえる内装設備にリニューアルするスタイルをとります。現状の内装設備をカスタマイズし、次のテナントから選んでもらえるスペックにする、という極めて合理的な考え方です。日本ほど規制が厳しくないので、自由度が高いようです。ズバリ、原状回復という英単語が存在しないのは、上記の様な考え方があるためといえるでしょう。
アメリカの場合、入居でどれだけ「利益が出るか」が貸主の関心事になります。したがって、内装工事費用や原状回復費用の負担割合も、次の入居者がどのくらいの期間で決まるかなど、その物件が置かれている状況によって変わる可能性があります。そのため、契約を締結する際は退去時に交渉できる余地があるような契約内容にしておくといいでしょう。
米国の賃貸借契約は、ほとんど定期建物賃貸借契約です。期間の定めがあり、当然長期になりやすい契約です。投資利回りの確定が事業用不動産は特に重要、という考えです。
アメリカの不動産仲介企業の役割は?
アメリカにも当然、不動産仲介企業があります。日本と同じように物件を探す窓口となって物件紹介を行ってくれます。そして、賃貸契約する際に仲介手数料が発生します。
日本と違う点は、賃貸契約を行う際、貸主・借主のどちらとも代理人を立てるのが一般的ということです。
代理人は現地調査、交渉、契約までの業務を貸主・借主の代理で行います。
注意が必要なこととして、アメリカの不動産仲介業者は「物件を紹介するのみ」ということを覚えておきましょう。物件仲介に付随する関連業務は、別途Feeが発生します。契約書に記されている業務以外は業務外であり、追加Feeが発生するのが当たり前なのです。
また、賃貸条件や賃料について、場所によっては、オーナーチェンジごとに条件の変更依頼があり、家賃が確実に上がったりするところもあるようです。不動産仲介業者に任せきりにせず、自分でも事前に調査しておく必要があります。
覚えておきたいアメリカのオフィス賃貸の特長
賃料表示単位
日本では賃料表示について、尺貫法による「坪/月」を標準的な表示単位としています。
一方、アメリカでは、平方フィートによる「sq.ft.(スクエアフィート)」を標準的な表示単位としています。
敷金(デポジット)
アメリカでオフィス賃貸物件の申し込みをすると、貸主はまず、敷金(デポジット)の額を決めるために信用調査会社に借主の調査を依頼します。
この信用調査会社の評価次第で敷金(デポジット)は大きく変わります。
評価が高かった場合は保証金が安く評価次第では、敷金、保証金(預託金)なしも珍しくありません。逆に評価が低かった場合は6カ月分の敷金(デポジット)を要求されることもあります。これは一般的に「ギャランティ」といい、債務不履行のための預託金です。
ただ、銀行保証(LC)活用も多く見受けられます。
フリーレント
日本でも見かけるようになってきましたが、アメリカにはフリーレント(一定期間賃料が発生しない物件)の習慣があります。
フリーレントをうたっていない物件であっても交渉をしてみる価値はあるでしょう。ただし、債務不履行の場合、フリーレント費用の返還は当たり前、損害金(ペナルティ)条項も加筆されるケースが多いので注意が必要です。
契約形態
毎月賃料を支払うのは日本と同じですが、契約形態はリース契約(定期建物賃貸借契約)になります。
したがってアメリカでは、もし契約途中で退去(解約)をすると契約違反となり、多額のペナルティを支払うことになってしまいます。
このため、アメリカのオフィス賃貸契約では、サブリース(転貸)について取り決めをしているケースが多く見られます。
ちなみに、アメリカでは更新料はありません。また、契約期間が長期間になる場合、賃料の値下げ交渉が可能です(賃料増減)。
値下げ、値上げとも、公正に3年毎ぐらいに実施しています。基準となる単価は、契約締結時の単価です。
日本よりも能動的に契約内容について交渉する必要があるといえるでしょう。
アメリカのオフィス賃料の目安(世界オフィス賃料比較)
世界の都市オフィス賃料ランキングを参考までにご紹介いたします。
【参照】一般社団法人RCAA協会 Newsプラス記事「世界都市賃料比較ランキング」
最も高額なのはニューヨークの1㎡/約32,000円以上です。逆に最も低額なのはアトランタの1㎡/約6,000円となっています。
もちろん為替変動も考慮しなければならないので、あくまで参考にとどめておいてください。
日本でもいえることですが、その土地によって賃料は当然変わってきます。
アメリカは連邦国家です。州による自治が確立しており、原理原則は共有していますが、州によってり法律も変わります。一般的に賃料は投資資本に対し、グロスで8%前後です。
近年、ニューヨーク、西海岸、シアトルなど、不動産は高騰しています。また、長期的に不動産を俯瞰すれば、世界から人、物、金、情報が集まる米国は、人気エリアの不動産相場が上がります。常に成長のポテンシャルをもった国です。具体的には、毎年日本の札幌市一つ分の人口増がある国です。また、米国に移住する人は、若く向上心の強い人達です。不動産投資、ポートフォリオとして米国は外すことのできない国です。
自分がアメリカのどこでビジネスを展開していきたいかをよく考えたうえで、個々の物件の契約条件をよく吟味して決めたいものですね。
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【続編】海外の原状回復とオフィス賃貸事情・アメリカ編
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