「原状回復」とは、店舗やオフィスを借りたとき(=入居時)の状態に戻すことを指します。
しかし、人によっては「原状回復」や「原状復旧」、「原状復帰」という呼び方を使う人もいます。(現状は漢字が間違っています。現状とは今現在の状態を意味します)
あなたは呼び方が違う理由をご存知ですか?「原状回復」「原状復旧」「原状復帰」、意味に違いはあるのでしょうか?
原状回復?原状復旧?原状復帰?
実は、「原状回復」「原状復旧」「原状復帰」は、同じことを意味します。
それなのに呼び方が違っているのは、業界によって使われる用語が異なることが理由です。
- 「原状回復」は法律用語(現状回復ではありません)
- 「原状復旧」は高齢の不動産屋がよく使う(現状復旧ではありません)
- 「原状復帰」は建設用語(現状復帰ではありません)
したがって、話す相手によって「原状回復」だったり「原状復帰」だったりと、呼び方が変わってくるのです。
「現状回復」ではなく「原状回復」と表記する理由
さて、「原状回復」にしろ「原状復帰」にしろ、なぜ「現状」ではなく「原状」という漢字を使っているのでしょうか?
これには歴史的な背景があると言われています。
原状回復とは、もともと土地を借りて借主自ら建物を建設し、更地にして明け渡す義務でした。建築物は工場が多く見受けられ、この工場の原状回復を行う場合、元の更地にすることが多かったそうです。
その当時の法律家が「原っぱに戻す」というニュアンスを汲んで「原」状回復と定義した、と言われています。
言葉の意味を調べてみても、「原状」とするのが正しそうです。
原状:初めにあった状態、もとのままの形態(貸主・借主が原状と定めた状態)
現状:現在の状態、ありさま
(デジタル大辞林より)
「原状回復」「原状復旧」「原状復帰」は、店舗やオフィスを借りたときの状態に戻すわけですから、現在の状態に戻すという「現状」ではなく、当初の状態に戻す「原状」を使うのが正しいということです。
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オフィス・店舗の原状回復/原状復旧/原状復帰には要注意
原状復帰は建設側の言葉、原状回復は法律上の言葉であり、いずれの場合も「現状」ではなく「原状」という漢字を使う、ということはお分かりいただけましたでしょうか。
この原状回復/原状復旧/原状復帰、実はオフィス移転時に大きな悩みの種になることが多いのです。
借主側は、オフィスの退出時に原状回復/原状復旧/原状復帰を求められます。契約書にも書かれているため、借主の責任として理解はしていらっしゃるかと思います。
しかし、いざ店舗閉鎖、オフィス移転時に原状回復/原状復旧/原状復帰の見積書が送られてくると、あまりの高額さにびっくりしてしまう人が多いのです。
原状回復義務を履行しませんと敷金返還請求権が確定しません。また、明渡し遅延損害金の対象になります。
しかし、原状回復義務があるからといって、そこまで高額の原状回復費用を払わなければならないのか?
見積もりで出てきた費用は、本当に妥当な見積もり金額なのでしょうか?
いいえ、オフィス・店舗の原状回復費は、見積もりから大幅削減が可能です。
※オフィスの原状回復費が高くなってしまう理由は、以下の記事にまとめました。オフィスの原状回復費を削減するためには、以下の記事に示したようなポイントがあります。
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執筆者 萩原大巳のワンポイントアドバイス
中小ビルオーナーもテナントも、コロナ禍3年で財務が損傷しています。
ビルオーナーは敷金(預託金:デポジット)を返還したくありません。敷金より原状回復費を差引けば(敷引き)済むからです。
資材も建築費も高騰し、原状回復工事も高騰しました。こんな経済状況で原状回復に伴う敷金返還のトラブルが多くなっています。
しかし、2020年4月より民法改正が実施され、原状回復、敷金の目的と定義が明文化されました。これからの原状回復、敷金返還の協議は、改正民法が全ての基準となり考慮要件となりました。
ぜひ、以下の原状回復・敷金の改正民法解説を参考にして下さい。