オフィスを移転する際に不可欠なのが原状回復です。しかし、原状回復工事の見積書を見ると、「高い!」と思う人がほとんどです。
オフィス移転プロジェクトの担当者は、打ち合わせや調整で忙しいもの。そこに高額な原状回復費用を見せられて上から「なんとかしろ」と言われたら呆然としますよね。退去までの時間は限られており、オーバーすると違約金を取られてしまいます。
こうした悩みは、あなたの会社だけではなく、多くの企業が抱える問題です。「原状回復費の見積もりが高い」というのはテナントの共通認識といえるでしょう。
オフィス移転する企業担当者の状態を整理してみましょう。
- 賃貸借契約書に則って原状回復をする
- 原状回復費用は少しでも安くしたい
- 安くするには交渉が必要である
①は絶対に守らなければいけません。しなければトラブルになるだけです。
②コストをできるだけ圧縮するのはビジネスの基本です。上司から「なんとかしろ」と言われるのも無理ありません。
③ビルオーナーと交渉しなければいけないのですが、原状回復は不動産契約の知識、建築の知識などが必要です。
したがって、担当者は、契約書に準じて、安く原状回復するために、適切な交渉ができる必要があります。しかし、一般のサラリーマンにそこまでを望むのは酷なことです。
そこでオススメなのが、専門家に相談するという手段です。今回はオフィスの原状回復をするにあたって、専門家に依頼することが最適解である理由を解説いたします。
オフィスにおける原状回復とは
まずは基本の確認から。オフィスにおける原状回復とは、賃貸借契約終了時にテナント(借主)がオーナー(貸主)に対して、物件を借りる前の状態に戻すことです。
具体的には
①入居にあたって新設・増設したものを撤去する
②移設したものを元に戻す
という2点を行うことと考えればいいでしょう。
基本的に原状回復の詳細は、賃貸借契約書に明記されています。どのような状態でオーナーに戻せばいいのか契約書で確認してみましょう。
原状回復費が高くなるのは“曖昧”だから
オフィスの原状回復費は高額になりやすく、テナントとオーナーの間でトラブルに発展することもあります。トラブルになる原因のひとつは、原状回復費の算出基準が“曖昧”だからでしょう。
一般的な工事と違って、オフィスの原状回復工事は法的根拠のある明確な基準というものがありません。
例えば、マンションやアパートなどの賃貸でも原状回復が求められますが、こちらは法的拘束力こそないものの、国土交通省による「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」があり、このガイドラインと多くの判例から事実上の基準ができあがっています。
しかしオフィスの場合、「契約自由の原則」によって、基準が存在せず、基本的にはテナントとオーナーが契約した内容がすべてといってもいいのです。それにも関わらず、オフィスの賃貸借の場合、契約時にテナントとオーナーが相互の確認をしっかり行うということは軽視されています。
知識のないテナント側は、気づかないままオーナーに有利な条件で契約してしまっているケースも見受けられるのです。
これによって、テナントが思いもしなかった高額の原状回復費が見積もられてしまうというわけです。
「あわよくば」を狙うオーナーも
ガイドラインは参考程度に使われることはありますが、やはり基本はテナントとオーナーが“合意”をして結んだ契約書が重要です。
だから、原状回復の項目が曖昧になっていることを悪用するオーナーも出てきてしまうのです。
一般にビルのオーナーは、テナントが退去してしまうと家賃収入がストップするので、早く次の入居者を入れたいと考えます。そのため、なるべく魅力のあるビルにしたいと考え、原状回復という名のグレードアップ工事をしようとするケースが珍しくないのです。
もちろん、グレードアップ自体はオーナーの自由ですが、その費用を退去するテナントに負担させることはおかしいでしょう。
また、壁や床、天井などの経年劣化による通常損耗の修繕費は家賃の中に含まれているにもかかわらず、原状回復でその費用を負担させようとすることもあります。そのほか、本来であればテナントが負担する必要のないビル共用部(トイレやエレベーターホールなど)の補修まで原状回復費に含めるケースも珍しくありません。
しかし、そうしたことも知識がなければ分からないことでしょう。
このように指摘されれば、「そういう費用は払いたくない」と考えることができますが、多くの企業は単に「原状回復工事は高いもの」と諦めてしまっているのが現状なのです。
どうして原状回復費が安くなるのか
「原状回復が高くなるのは分かった。でも専門家なら安くなるというのなら、どうしてそれが可能なの?」
というご質問をよくされます。
原状回復費を安くするには、3つ段階を踏む必要があります。
- 契約書の確認:原状回復の内容を把握します
- 見積書の精査:契約書の内容と照らし合わせます
- オーナー側との交渉:1、2を踏まえ、原状回復を適正化します
知識のない方だと、契約書の内容も正確に把握できません。不動産・建築・法律の知識が高度に要求されるのが原状回復なのです。
賃貸借契約書だけでなく、ビルの貸方基準、館内規則(ビル運用のルール)なども分析する必要があります。
工事区分を確定させ、工事が不要な部分も明確化することで適正な査定をすることができます。もちろん人件費なども、独自のノウハウを駆使して相場価格と照らし合わせて割り出すことができます。
上記のことをテナントの担当者がやろうと思っても現実的ではないでしょう。また、半端な知識で交渉して少ない値下げを勝ち取ってしまうと、確定してしまってそれ以上下げられなくなってしまうというケースもあります。
したがって、経験豊富で知識もある専門家のサポートが不可欠なのです。
原状回復で後悔しないために立会いは忘れずに
テナントとオーナー側の認識のすり合わせが非常に重要です。
そのためには、書面にしてきちんとやりとりの内容を残すことです。また、立会いによる確認も大切です。
外せない立会いのタイミングを確認しておきましょう。
入居前の立会い
原状回復は元の状態に戻すことですから、戻すべき状態を知っておくことはとても大切です。これから入居するとはいえ、いつか退去する時に備えて入居前の立会いは必ずしておきましょう。
例えば、最初から破損していた箇所などがあれば、写真付きで書面化し、テナント・オーナーが双方とも同じ書類を持っておきましょう。
原状回復見積もり作成前の退出立会い
原状回復を行う場合、見積もりを作成する前に立会いがあります。
この立会いで、修繕の必要がある箇所の確認や、工事内容についての説明がなされます。
ただ、一般的なサラリーマンに原状回復の説明や工事内容を説明しても「そうですか」しか言えないでしょう。こうした立会いに専門家も呼んで、一緒に立会ってもらうのもひとつの方法でしょう。
原状回復完了後の立会い
原状回復が完了したことを確認するために、工事完了後の立会いをオススメします。
オーナーによっては、工事が終わってしばらくしてから「ここが不十分だったから追加工事が必要だ」と言い出してトラブルになることがあるので、それを予防するためにもしっかりと確認しておきましょう。
オフィス原状回復で頼れる専門家の条件
専門家の必要性はお分かりいただけたと思いますが、どんな職業もピンキリがあります。
信頼できる専門家を探すためのポイントをご紹介しましょう。
ポイント
- 実績:これまでこなしてきた件数は分かりやすい数値情報です。
- オーナー側とのしがらみがない:オーナーに忖度しては適正価格の実現はありません。
- 工事を明確に説明ができる:契約書から復旧義務がどこまでかを説明できたり、適正価格がいくらになるかエビデンスをもって説明ができることが重要です。
- 法的にも問題ないことが説明できる:いくら工事に詳しくても、法律面が弱いと信頼できません。弁護士ともチーム体制を作っている専門家集団が理想的です。
専門家のサポートによって、原状回復費を大幅にダウンさせることができます。また、交渉によって話がこじれてトラブルになるということもありません。レベルの高いプロフェッショナルであれば、時間がなくても結果を出すこともできます(もちろん時間をかけたほうがもっといい結果になることは言うまでもありません)。