企業によっては「規模が大きくなってきたから現状のオフィスでは手狭になった。さらなる飛躍のためにも移転しよう!」と拡大移転考えるケースもあることでしょう。
しかし、不動産の賃貸借契約には、多くの場合「契約期間」というものが存在します。したがって、契約期間を満了する前に中途解約する場合には、違約金について注意が必要です。
今回はオフィスや事務所を中途解約しようとしている企業のために、どこに気をつければいいか、中途解約にまつわるトラブルについてなどをご紹介します。
まずは賃貸契約書の中途解約条項をチェック!
多くの場合、オフィスや事務所の賃貸借契約は、2~3年間を契約期間としています。そして、もしも契約期間内に解約することになった場合を想定した「解約条項」が設けられているはずです。
一般的な解約条項の内容は、以下のようになっています。
「テナントまたはオーナーは6ヶ月の予告期間をもって契約期間中においても本契約を解約することができる。テナントは6ヶ月分の賃料相当額を支払う場合には、本契約を即時解約することができる」
要するに、中途解約するなら、6ヶ月前には貸主に知らせることが一般的というわけですね。
当然ながら、上記のような契約内容はあくまで「一般例」です。実際のところは貴社の結んだ契約次第ですので、中途解約する場合、まずは契約書を確認することが大切です。
中途解約する時は違約金の特約も確認しましょう
解約条項には特約を伴っているケースがあります。例えば「賃借人が中途解約した場合、賃借人は、残存期間の賃料、共益費を違約金として支払う」といった内容が特約として記されています。
解約条項を確認するのと同時に、特約の有無と内容も確認しましょう。そして、中途解約時にはどれくらいの違約金を支払うのが妥当なのかの基準を持っておくことが重要です。
なぜなら、中途解約時の違約金を巡ってトラブルが生じるケースがあるからです。
中途解約の違約金に関して実際にあったトラブル
実際に、中途解約の違約金を巡って裁判まで発展してしまった事例があります。
契約書には、「賃借人が中途解約した場合、賃借人は、残存期間の賃料、共益費を違約金として支払う」という特約がありました。まさに先程の例で示した内容です。そこで、ビル管理会社は中途解約するテナントに対し契約書に則って違約金の支払いを求めました。しかし、テナント側が難色を示したのです。
なぜテナントは契約書に書かれているにも関わらず難色を示すのでしょうか。
それは、「契約期間が4年間で、中途解約の残存期間は3年2ヶ月もあった」からです。3年2ヶ月分の賃料、共益費となるとかなりの額ですね。
中途解約時の違約金に関する東京地裁の見解
では、このトラブルに対して、裁判所の見解を見てみましょう。
東京地裁は次のような判断をしました。
「解約に至った原因が賃借人(テナント)側にあることや、賃借人側に有利な契約内容である(保証金の分割払い等が認められていました)という事情があるが、こうした事情を考慮してもなお、約3年2ヶ月の賃料、共益費相当額の違約金が請求可能であるという様な約束は賃借人に著しく不利である。賃借人の解約の自由を極端に制限することになるから、その効力を全面的に認めることはできない。1年分の賃料と共益費相当額の限度で有効であり、その余の部分は公序良俗に反して無効であると解する」
もう少し詳しく解説しましょう。
ビル管理会社は、テナントに中途解約された場合、この物件に空白期間が生じることになります。ビル管理側にとって中途解約とは想定外の解約ですから、当然新たなテナントを探すのは契約満了したケースよりも困難であることが予想されます。したがって、中途解約金で新しいテナントを探す間を補填するわけです。
しかし、今回のケースに当てはめると3年2ヶ月も新たなテナントが見つからないことになってしまいます。当然、3年2ヶ月以内に新たに入居するテナントが現れるでしょう。すると、違約金と新しいテナントが支払う賃料の二重取りになるので、妥当ではない。
ということです。
参考:東京地判平成8年8月22日(判例タイムズ933号155頁)
オフィスビルを中途解約する場合は、ここに注意!
裁判所は、「中途解約は物件の空白期間を生むので、ビル管理会社にとって不利益なため、入居テナントにペナルティーが発生するのは、やむを得ない。しかし、次のテナントが決定するまでの相当期間分としては約1年が妥当」と考えているようです。
したがって、オフィスを中途解約する時は、賃料や共益費などの1年分を越える中途解約金を請求されないか注意してください。もし請求が予想される場合は、まず専門家へ相談をしてみると良いでしょう。
専門家は、中途解約に伴う違約金だけでなく、オフィスや事務所の解約時に発生するさまざまな費用が適正かどうか確認することもできます。こうした金額が適正でない場合、費用を減額できる可能性もありますので、そういう意味でも専門家への相談は有効です。
※その他にも、オフィス移転にまつわる基礎知識について以下の記事を参考にしてくだい。移転が決まった方、移転検討中の方はぜひご一読ください。
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