経緯
新橋繁華街の商業ビルにテナントとして入居した株式会社松井商会(クライアント)は、DXを進めて働き方を見直した結果、テレワーク活用によるオフィス縮小を決断し、解約予告を提出した。出てきた原状回復見積についての質疑・説明を求めるも、大声で威嚇される。
値引きのお願いなどとてもできそうになく、敷金(預託金)1,515万円が返還されるのか心配になりRCAA 協会に相談した。
賃貸借契約内訳、貸主・借主紹介
物件名 | 港区新橋商業ビル 11階 C区画 |
面積 | 58.2坪 |
使用目的 | オフィス |
貸主 | 株式会社T企画 |
管理会社兼指定業者 | 株式会社Aビルシステム |
借主(クライアント) | 株式会社松井商会 |
敷金(預託金) | 15,155,280円 |
初回原状回復見積り | 7,700,000円 |
査定金額 | 3,630,000〜3,850,000円 |
合意金額 | 3,300,000円 |
削減額 | 4,400,000円 |
削減率 | 57% |
原状回復義務 | スケルトン戻し |
敷金返還額 | 11,855,280円 |
(全て総額表示)
問題の抽出
貸主のT企画は、都内繁華街の一等地にAグレードのビルを2棟所有、茨城に本社があり総合不動産業を営んでいる。AビルシステムはT企画の系列企業である。
新橋商業ビルの退去テナント2社を調査した結果、高圧的で聞く耳を持たない管理会社であったため、2社ともトラブルを回避するために原状回復費は交渉もせず見積り通りの金額で発注し、敷金より差引き(敷引き)、約束の期日の3ヶ月後に敷金返還されたことが分かった。
借主である株式会社松井商会は海運事業の会社である。繁華街のビルオーナーは実質誰が経営権を持っているのか調査してもわからない。特に、飲食店や風俗、金融パチンコの景品交換など明らかにコンプライアンスで問題のある貸主、借主が多いことも事実である。
本件のビルは諸官庁届出書類も登記簿も問題はなく、賃貸借契約書も公正で原状回復も明確に復旧内容が書かれている契約書であった。
現地調査し、資料を分析した結果、問題の抽出は3事項に絞り込んだ。
- 天井の張替え面積と塗装面積が2倍?
- 床OAフロアーの所有権と張替え面積相違
- ①②の面積の違いによる電気防災空調設備のB工事数量相違
C工事解体には指定がなく、協会会員業者である(有)インテリア・プランニングで解体撤去を実施することにした。
原状回復適正査定金額は?敷金返還は、いついくら返還?
敷金返還請求権を確定し、協議のポイントと合意書締結内容を通知。結果、敷金が速やかに1,185万円返還された。
書面にて原状回復協議依頼書を通知し、貸主側担当責任者と面談した。問題点1〜3の説明を求めるも解答なし。逆に、
弁護士法第72条(非弁行為)の指摘と、「〇月〇日迄に原状回復を発注いただけなければ明渡し遅延損害金の対象となり家賃の倍額の損害金が発生する」と圧力をかけられた。
担当のRCAA協会原状回復査定員の山田のサポートに入った萩原も、貸主側担当者に対する違和感を持った。「これはインテリ・ヤ〇ザの可能性あり…」
対策として、協会法務担当弁護士に代理人をお願いして山田・萩原は技術サポートに徹した。
問題点の根拠として下記を提出
- 天伏図書・現地写真(1号証)
- 床の現地写真(2号証)…面積は現地で貸主、借主それぞれの建築技術者による実測
- 現地で天井の張替え数量、特別損耗の確定を主張
「天井に設置してある電気照明、防災機器、空調設備の吹き出し口の脱着など、面積が2倍になれば数量も工事費も2倍になる」この①②③がエビデンスでありクライアントの主張の法的根拠である。
事前に上記エビデンスを内容証明で通知、弁護士N先生の立会いのもと、貸主側代理人弁護士、貸主管理会社代表、貸主側本件担当者で現地調査、確認を実施。クライアント側の主張は全て立証された。
結果 7,700,000 → 3,300,000円で合意、無事に紛争前解決に成功した。
その場で原状回復発注に捺印、確認をもって、敷金返還請求権11,855,280円の敷金返還が双方の当事者により確定された。あとは本件担当の山田査定員がC工事解体撤去を完了し、鍵・セキュリティカード返却を発注・捺印し、明渡しを実施した。
捺印後、当月末日に敷金返還が実行された。
クライアントからいただいたコメント
敷金返還を心配していましたが、査定書の信憑性の高さに驚いています。経済ヤ〇ザ?に対する対策もお見事で、エビデンスの重要性についても認識しました。
英語圏では御社のような代理人型ビジネスは「Power of Attorney」(代理人の力)と呼ばれています。非弁行為対策のやり方、明渡し遅延損害金の貸主側担当者の圧力のかけ方まで勉強させていただきました。何よりも敷金が明け渡し後3ヶ月のところ20日で早期返還されたことに驚きです。本当にありがとうございました。経理担当常務の西川も胸を撫で下ろしていました。
株式会社松井商会 代表取締役 松井 誠 様
協会理事 萩原 大巳よりコメント
繁華街の商業ビルは注意を!
繁華街の商業ビルはテナントの許認可、ビルオーナーともコンプライアンスに問題があり、金融機関が融資対象外にしているケースが多いです。
ここは中華系私募ファンドが出資している特殊なマーケットでした。必然的に中国系、中華系、韓国系、東南アジア系のテナントが多いです。賃貸借契約の借主の名義も変更しないで、貸主承諾もなくお店は売却されていきます。ビルも所有権移転が頻繁に起こります。
法令遵守なんて絵に描いた餅であり、非常用通路にビールケースなど物が積み上げられていたり、スプリンクラー、その他防災設備も取り付けられていないなど、問題も多い特殊マーケットです。反面、情報開示義務のない私募ファンドにとってはリターンの大きな市場です。新宿歌舞伎町、池袋西口繁華街、横浜福富町繁華街、千葉栄町などその代表です。
店舗経営されている経営者の皆様、当協会は法令遵守の姿勢で原状回復・B工事、更新条件、借地借家法、事業再構築補助金までご相談承ります。
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