金融商品化した不動産にありがちな“原状未確定”物件(オーナーチェンジの罠)

流動化が進む不動産は、度重なるオーナーの変更に見舞われます。

オーナー企業やAM(資産管理業務)・PM(賃貸経営管理業務)BM(ビル管理運営)の連携・情報引き継ぎが杜撰な場合、回復すべき“原状”が分からなくなってしまうことがあります。

今回ご紹介するケースでは、ビルの全面改修が行われており、原状未確定状態にも関わらず推測で原状回復工事が見積もられていました。

エビデンス不在の高額原状回復工事が行われかねなかった事例です。

 

賃借人の概要

クライアント 医療法人社団 桜緑会
テナント

大阪府大阪市 コウズキキャピタルウエスト

8階 262.30㎡/79.35坪

医療法人社団 桜緑会は、さくらクリニックの名称で大手医療機械とネットワークを組み、最新、最良の医療を提供する、生活習慣病の改善に力を入れている優良クリニックである。

 

賃貸人の概要

賃貸人 コウズキキャピタル株式会社
建物総合管理 鹿島建物総合管理株式会社
原状回復指定業者 鹿島建物総合管理株式会社

コウズキキャピタル株式会社は、「KOUZUKI CAPITAL」のブランド名で東京、大阪にビルを所有する不動産投資法人である。

鹿島建物総合管理株式会社は、スーパーゼネコン鹿島建設グループであり、BM(建物管理)を専門とするBM会社であり、建築請負会社である。

 

実績

初回見積金額 13,000,000円
再見積金額 9,850,000円
原状回復合意金額 6,500,000円
査定額 6,000,000~6,800,000円
削減額 6,500,000円
削減率 50%

※全て税別

オーナー変更、ビル改修…原状回復の契約条項はどうなってしまうの? 

オーナー変更、ビル改修…原状回復の契約条項はどうなってしまうの?

医療法人桜緑会は有名医療機関とのネットワークを持つクリニックグループです。しかし各クリニックの経営を見直し、選択と集中を進めていくなかで、大阪市にあるさくらクリニックについては、賃貸借契約の更新をしないという経営判断に至りました。

退去にあたっては原状回復をしなければいけません。桜緑会の担当者が指定業者に見積もりを依頼したところ1300万円という高額なものが出されました。

実は、さくらクリニックの入居していたビルは少し特殊な事情を抱えていました。

それは、過去にオーナーが変わっていることに加えて、全面改修がされており、契約書に定められている“原状(入居時の状態)”に戻すことが現実的でないという問題です。

桜緑会の担当者は、見積もり内容が正しいのか、契約内容に沿っているのか悩み、RCAA協会会員の原状回復査定で多大な実績を有する(株)スリーエー・コーポレーションに相談しました。

 

原状未確定状態を解決し再見積もりへ 

本件業務を受託した株式会社スリーエー・コーポレーション(3AC)は、賃貸人とBM・指定業者になっているゼネコンに対し、原状回復図書、仕上表、施工体制台帳、工程表の開示要求を医療法人桜緑会とともに行いました。しかし、賃貸人もBM・指定業者になっているゼネコンも開示できる資料がなく原状の確定ができませんでした。

ビル運営は、多くの場合AM、PM、BMと縦割り組織になっており、クロスファンクションチームでビル運営しているわけではありません。したがって、本件のように引継ぎがうまくできていない物件の場合、原状の確定がされず図書の存在すら確認できないという状況が発生してしまうのです。

そこでビルオーナー側にも協力してもらい、3ACの専門家が復旧図書を作成しました。そのうえで再度本査定を実施。すると600~680万円が適正価格であるという結果でした。

 

最初の見積もりはなんだったのか?驚きの決着価格 

オーナー側との協議によって、建築部分は桜緑会の推薦業者が施工することが認められ、電気やその他設備はメンテナンスの関係もあるため指定業者であるゼネコンが実施するということになりました。各費用は以下の通りです。

建築工事 460万円
電気その他設備工事 190万円
合計 650万円
削減額 50%

なんと、初回の見積もり1300万円の半額になりました。桜緑会の担当者が協会会員である3ACに相談しなかったらと思うとぞっとする話です。

 

医療法人社団 桜緑会様からいただいたコメント

桜緑会の担当者 M氏
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協会会員の3ACスタッフの皆様に感服いたしました。本社は東京ですので、今後とも出退店の際はご相談させてください。本当にありがとうございました。末永いお付き合いをよろしくお願いいたします。

 

査定者の所見

協会会員査定員 萩原大巳

現在は不動産も金融商品の一つとなり、証券化や不動産投資法人(ファンド物件)、信託物件にするなど、不動産の流動化が一般的になってきています。それに伴い、本件のようなケースが多発しているのが現状です。
賃貸人(オーナー側)は、経済合理性のもと、次のテナントに選んでもらえる改修工事を実施したいと考えています。誰だってきれいで快適な物件に入居したいと思うでしょうから、その考え自体は理解できます。
問題は、賃貸人(テナント側)に宅地建物取引業法、建築基準法、消防法、ビル管理法まで分かる専門家がいないということです。このため、情報格差によって賃貸人側の主張通りの工事が行われてしまいやすくなっています。この工事は、「原状回復という名の改修工事」となってしまうケースが珍しくありません。

建築、設備の基準は、すべて図書です。現地を少し見ただけで賃貸借契約書の熟読もせず、見積書を作成する業者も少なくありません。こうした業者が争点をより複雑にしています。
すべては、エビデンス(証)です。日本は法治国家ですので、エビデンスによって原状回復の問題は決着するのです。一般社団法人RCAA協会及び協会会員(株)スリーエー・コーポレーションでは、専門家がエビデンスに則ってクライアントをサポートしています。

RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション
査定員 萩原大巳

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