協議猶予は10日間!C工事分以外にも費用は圧縮できるのか!?

株式会社シグナルホールディングス

指定業者から出された見積書を見て「高い」と思った担当者は対応方法をネットなどで調べます。そして「C工事に相当する部分を自社の選んだ業者にしてもらう」という対応をするケースがあります。

それでも納得できる価格にならなかった場合、はじめて専門業者に頼るのですが、そうなると時間的な猶予がなくなっていることが少なくありません。

今回ご紹介する事例も限られた時間しかありませんでした。

担当者として、オフィス移転が決まったら何を用意すればいいのかも含めてご紹介しましょう。

 

賃借人の概要

株式会社シグナルホールディングスの会議室

クライアント 株式会社シグナルホールディングス
テナント 大阪市中央区 EDGE心斎橋ビル
賃貸借面積

928.46㎡/280.86坪

(5階東側、6階倉庫、8階倉庫、11階、12階)

賃貸人の概要

賃貸人 三井住友信託銀行株式会社
AM・PM 野村不動産パートナーズ株式会社
BM・指定業者 オリックスファシリティーズ株式会社

 

実績

初回見積金額(※工事造作解体廃棄を含む) 25,964,580円
再見積(※工事造作解体廃棄を除く) 23,814,580円
査定額 17,000,000~18,000,000円
合意金額 18,500,000円
削減率

29%

※全て税別

原状回復の高額見積もりに対してC工事の業者に相談。しかし・・・

原状回復の高額見積もりに対してC工事の業者に相談。

シグナルホールディングス社は業績向上に伴って同じビル内での増床を繰り返していました。その結果、倉庫も含めると5フロアーもの多重フロアーの区画に入居する状態になっていました。退去するビルは竣工こそ古いものの、数回の改修工事を実施しており、現在もビルのグレードは高く維持されています。

とはいえ、シグナルホールディングス社としては、このままだとコミュニケーションに問題があると感じていました。そこで、スタッフの働く環境も重視して、近隣にある新築スーパーグレードのビルのワンフロアに移転することにしました。そして入居しているビルに対して解約予告を提出しました。

 

シグナルホールディングス社のもとに初回見積が届きました。そこには、税別で約2600万円※造作間仕切りを含む)という大金が記載されています。これでは高すぎると感じたシグナルホールディングス社のオフィス移転担当者は、造作・什器の買い取りをしている大手業者に相談しました。

しかし、これは一般的に良い選択とは言えません。

なぜなら、C工事解体、C工事弱電など賃借人の資産を賃借人の推薦する業者が施工し原状回復費を圧縮しようとすることは、賃貸人側にとって想定済みだからです。ですから当然、原状回復工事期間前の施工を求められます。そして館内規則によって土日や夜間の工事、警備員立会い、搬出搬入通路養生など、ビル運営ルールを厳守する必要もあります。また、工事に対するビル側の検査も厳しいのが一般的です。

上記リスクを考慮すると、思うような価格圧縮ができないというのが現状なのです。

また、養生、諸経費などダブル計上となり無駄なコストが生まれるだけでなく、時間的にも工期が厳しくなります。

 

ビル管理会社へC工事解体、廃棄、買い取りをシグナルホールディングス社の用意した業者で解体廃棄することを承諾してもらい、再見積もりをお願いすると、税別で約2400万円と提示されました。

およそ200万円の減額になったわけですが、そもそもの金額が大きいため、これでも高いことに変わりありません。

そこでシグナルホールディングス社の担当者はオフィス移転のPM(プロジェクトマネジメント)会社に相談しました。その結果、RCAA協会に査定依頼することになったのです。

 

指定業者とスピード対応で協議した結果は?

RCAA協会会員の(株)スリーエー・コーポレーション(3AC)が査定をすると、シグナルホールディングス社の物件の原状回復費は1700万~1800万円でした。

仮に高い方の1800万円としても、再見積もり額は600万円も割高だったということです。

 

原状回復の見積もりについては、建築に関する知識だけでなく、電気、空調、防災なども含めた知識を要するので、非常に専門性が高く、一般の方では見積内容がわかりにくいものになっています。

RCAA協会会員である3ACは査定結果と、「査定額の根拠」を担当役員に伝えました。シグナルホールディングス社の担当者はその説明に満足し、アドバイザリー契約を結んだのです。

この時、RCAA協会会員である専門の有資格者による査定協議を担当した3ACが工程表と見積表示、見積条件がないことに気づきました。すぐに指定業者に連絡を取り、工程表を確認したところ、なんと協議する猶予が10日間しかありませんでした。

工事が開始する当日、RCAA協会の査定員が午前中に現地調査を行いました。午後は指定業者との協議です。

翌日、指定業者から朝一連絡があり、可能な限り費用を抑えた原状回復の見積もりを提示する約束を取り付けることができました。そして提出された費用が1850万円(税抜)です。

RCAA協会の見立てでは、さらに100万円の値引きが可能でしたが、シグナルホールディングス社の経営判断によって1850万円で合意することが決まり、この案件は円満合意することができました。

 

オフィス移転担当者がまっさきに揃えるべき書類とは

原状回復は、賃貸借契約書によって「どこまで原状回復をするか明確にする義務」が賃貸人(オーナー)サイドにあります。

したがって、オフィス移転が決まった時は下記書類を揃えて確認することが重要なポイントとなります。

  1. 建物賃貸借契約書
  2. 重要事項説明書、内装工事指針書
  3. 建物図面(借りた時の状態がわかる図書:貸方基準図書)
  4. 入居図面(テナントが仕様変更した図面)
  5. ビル側原状回復工事見積書
  6. 退去告知(ビル側に出された届出)
  7. その他の資料 ・管理会社との打合せ資料など

上記書類を揃えた上で、原状回復の専門家に査定してもらってはじめて交渉することができます。それ以外のあやふやな情報では交渉のテーブルにすら上がりませんし、基準にもなりません。

 

今回のケースの場合、シグナルホールディングス社のオフィス移転担当者は、最初解体廃棄買い取りの専門業者に相談していました。これによってC工事分を原状回復費用から除外することはできましたが、RCAA協会ではこうした対応だけで「適正化」とは考えません。

オフィス移転の担当者は、賃借人・賃貸人・指定業者など、それぞれにとっての全体最適を専門家と相談し、上席に相談する資料(原状回復の可視化資料)を作成することが重要です。

 

査定者の所見

協会会員査定員 萩原大巳

シグナルホールディングス社担当者は初めてのオフィス移転の経験がないにも関わらず、非常に努力されました。
しかしすべてのビジネスは、5W1H+コストを明確にすることが基本です。これは原状回復を含むオフィス移転であっても同様です。
この事例は、まさに時間との戦いでした。今日までに発注合意しないと、原状回復工事が終了せず、家賃の倍額請求権の対象になるという状態だったのです。遅延損害金を回避し、なおかつ適正費用まで削減するという極めて難易度の高い協議でした。

したがって、こうしたリスクを低減するためにも担当者はオフィス移転の総合工程を進捗管理する必要があるといえるでしょう。

RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション
査定員 萩原大巳

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