敷金(預託金)が返還されない?資産除去債務で特別損失?
業務受託の経緯 不動産流動化によりビル所有者が変更(オーナーチェンジ)原状回復義務とは?
オーナーチェンジに伴い、賃貸スペースの見直しをおこない区画形成変更を実施。その際、電気、空調換気、防災、その他設備も新区画にあわせて改修工事を実施。賃貸契約書は区画形成前の原状回復義務と同じ内容にもかかわらず、賃貸面積だけ変更されていた。
原状回復義務に疑問を感じたヤマダホームズは、原状回復工事費用があまりに高額だったため、困惑しRCAA協会に原状回復の適正査定を依頼した。これは協会会員3A Corporationの有資格者チームが協議を担当した実例である。
※類似ケースを動画で解説しています
賃借人の概要
(株)ヤマダホームズ様は、住宅メーカーとして多数の実績を有し、ヤマダ電器グループで、ホームズ内の全て、家電から家具、建築までのワンストップ住宅メーカーである。
賃借人 | 株式会社ヤマダホームズ |
場所 | 東京都品川区 KDX東品川ビル |
面積 | 2階 1059.12㎡/320.38坪 |
賃貸人の概要
KENEDIXグループは、世界で初めて不動産の流動化(証券化)のビジネスモデルを創り、世界的な不動産デベロッパーである。創業者のケネディ・ウィルソンの名前は業界ではあまりにも有名である。(KW:US(New York)は、KENEDIXのホールディングカンパニーでフォーチュン500に入っている)
賃貸人 | ケネディクス・オフィス投資法人 |
PM | ケネディクス・プロパティ・マネジメント株式会社 |
BM | M不動産ビルマネジメント株式会社 →株式会社ハリマビステム(2019年2月1日より) |
指定業者 | ケネディクス・エンジニアリング株式会社 |
原状回復費用の推移
敷金(預託金) | 33,600,000円 |
初回見積 | 25,056,000円+8,640,000円(別途工事解体)=33,696,000円 |
再見積 | 23,544,000円+8,640,000円(別途工事解体)=32,184,000円 |
再再見積 | 18,360,000円 |
決定金額 | 12,960,000円+4,320,000円=17,280,000円 |
削減額 | 16,416,000円 |
削減率 | 48.72% |
敷金返還額 | 16,320,000円 |
(全て総額表示)
【査定者】一般社団法人RCAA協会会員「株式会社スリーエー・コーポレーション」
適正査定費用 17,820,000~18,360,000円
原状回復適正査定により原状回復内容の問題点を「ミエルカ」
抽出した問題点は5つ、
- 区画形成後の原状が確定されていない
- 電気、空調換気、防災、セキュリティ、その他設備の図書が不明
- テナン資産の建築物もオーナー指定になっているが、指定の法務根拠の有効性について
- 中央管理室のデーター変更工事はテナント負担なのか?
- 防災工事の図書作成申請はテナント側業者で実施できないのか?
原状回復協議の基準は適正査定 問題点1〜5のロジックの構築とは?
業務受託後、協会会員3A Corporation の専門家チームは徹底した現地調査を実施し、不明箇所については、入居図面(原状変更図書)に基づき諸官庁消防申請図まで調査した。
結果として、入居時の区画形成工事を除くすべての入居工事(原状変更工事)をヤマダホームズで実施した事を確認し、原状回復義務のリーガルレターを作成通知した。
リーガルレター内容は、1~5に要約された。(公文書通知書)
- 原状確定の情報開示の説明責任は、全て賃貸人にある。原状の証を明確にすることは、賃貸人の責務である。
- テナントの安全提供は、全て貸主責任であり、その為に独占的地位の指定業者が認められている。しかし、工事費用については市場の競争原理を考慮することが資本主義の原理原則である。
- 1と2の貸主の原状回復に対する義務履行に問題がある。(貸主の原状確定、情報開示と説明責任)
- データー変更工事のテナント負担は認められない。
- 消防申請図の作成と申請とも、上記理由によりテナントで行う。
1〜5について、リーガルレターと原状回復適正査定書を公文書としてRCAA協会法務担当弁護士名で賃貸人に通知した。通知後、貸主の最終決済者から本件の借主側技術アドバイザーである私、萩原 大巳に電話があり、1〜5全てヤマダホームズで確定して原状回復工事を実施して下さい、という連絡であった。
貸主側も世界的不動産デベロッパーであるので、法務、技術とも詳しい専門家は在籍している。
口頭ではなく書面と図書、適正査定書によるエビデンスを提示すれば正しい判断のできるビジネスパースンが本部には在籍している。その人に真実を解ってもらうことが最大の協議のポイントである。
敷金返還の結果は?
1~5のロジックを基準に原状を確定、防災工事を除く全ての工事について、積算工事項目を拾い出し、現場説明会を実施した。ヤマダホームズの協力業社で工事をし、3A Corporationが総合監理監修をおこなった。
もちろん明渡し検査は一回でクリア、明渡しを履行し敷金返還請求権を確定させた。
結果
原状回復工事+解体工事で、33,696,000円 → 17,280,000円
なんと削減額は16,320,000円となった。
敷金(預託金)は、33,600,000円から原状回復費用を全て支払い、残金16,320,000円が敷金返還額となりました。
クライアントボイス 資産除去債務特別損失がなくなり、逆に現金預金(敷金返還)が1632万という奇跡
「資産除去債務、原状回復の勘定科目の計上金額は、坪/5.4万円、1,730万円で計上してあり、多額の特別損失を出すところでした。結果として、計上金額以下になり満足しています。次のオフィスはしっかり原状を確定して適正査定を依頼します。ありがとうございました。」
との暖かい言葉をいただきました。
原状回復適正査定、査定員兼技術アドバイザーのコメント
削減協議を行うときにやってはいけない事は、知り合いの業社に、指定業者見積に値入れをしてもらい交渉することです。トラブルになったときに、工事項目を全て認めた証になってしまいます。ましてや、契約書も特約もビル運営の規則も理解してない業社が値入れした見積は何の証にもならず、かえって借主の立場を不利にします。それは愚策です。
指定業者にとって値入れ見積は、すでに織り込み済みなのです。注意して下さい。
当協会では、移転先B工事、移転元原状回復工事のご相談、適正査定は無料です。
資産除去債務までご相談承ります。