賃貸人サイドが回復すべき「原状」を把握していない状態での適正化

ビルの所有者(賃貸人)が何度も変わっていたり、フロア内の区画形成変更により、契約で定められていた原状回復の範囲が複雑化してしまうことがあります。

今回ご紹介するケースでは、賃貸人が原状回復の範囲をまったく把握しておらず、特に電気設備工事は範囲がメチャクチャな見積もりでした。

こうした場合、原状回復費の適正化は可能なのでしょうか。また、どのように対処すればいいのでしょうか。

 

賃借人の概要

ヤマダホームズ様は、住宅メーカーとして多数の実績を有し、HOME内の全てヤマダ電器グループで、家電から家具、建築までのワンストップ住宅メーカーである。

クライアント 株式会社ヤマダホームズ
テナント

東京都品川区 KDX東品川ビル

2階1059.12㎡/320.38坪

明渡し日 2019年2月28日

賃貸人の概要

KENEDIXグループは、世界で初めて不動産の流動化(証券化)のビジネスモデルを創り、世界的な不動産デベロッパーである。創業者のケネディウィルソンの名前は業界ではあまりにも有名である。(KW:US(New York)はKENEDIXのホールディングカンパニーで、フォーチュン500に入っている)

賃貸人 ケネディクス・オフィス投資法人
PM ケネディクス・プロパティ・マネジメント株式会社
BM

三井不動産ビルマネジメント株式会社

→株式会社ハリマビステム(2019年2月1日より)

指定業者 ケネディクス・エンジニアリング株式会社

原状回復費用の推移

初回見積 23,200,000円
再見積 21,800,000円
再再見積 20,600,000円
決定金額 16,000,000円

削減額

7,200,000円

削減率

31%

※全て税別

※【査定者】一般社団法人原状回復費・適正化協会会員「株式会社スリーエー・コーポレーション」にて査定

賃貸人側に原状回復の範囲を把握している人がいない!?

株式会社ヤマダホームズ(ヤマダホームズ)がオフィス移転のため見積書を賃貸人に求めたところ、2320万円でした。ヤマダホームズは住宅メーカーであり、グループ本体はビルオーナーでもあるため、この見積額に「工事費が高すぎる」という違和感を覚えました。

そこで、原状回復費用・適正化協会に相談。協会員の(株)スリーエー・コーポレーション(3AC)、一級建築士・管理建築士の小川友幸が無料査定を実施したところ、1600~1700万円が適正価格という結果でした。

しかし、今回の案件でもっとも大きな問題は、「賃貸人サイドに、どこまで原状回復をするべきかを把握している人間がいない」ということでした。

つまり、どこまで原状回復するかわからない状態で指定業者が見積もりを出してきたので適正価格とは程遠い見積もり金額になってしまったのです。

 

なぜ、本来なら“ありえない”状態になってしまったのか

なぜヤマダホームズの原状回復はこのような状況になってしまったのでしょうか。

なぜ?ヤマダホームズの原状回復はこのような状況になってしまったのでしょうか。

実は、ヤマダホームズの入居しているビルは2度の所有権移転があったほか、入居しているフロアも区画を2区画に割る区画形成を経ていました。区画形成に伴い、電気・その他設備の改修工事が実施されていたので、回復させるべき“原状”を誰も把握できていない、という問題が発生してしまったのです。

事業用不動産の場合、賃借人は賃貸借契約で定められた原状回復を行う義務がありますが、「どのような原状回復を実施するかを明確に詳細説明する義務」は賃貸人にあります。

この賃貸人の義務は「2005年12月16日最高裁判決、敷金返還請求事件、事件番号:平成16(受)1573」の判決を拠り所にしており、確かなものといっていいでしょう。

賃貸人は仕上表や図書、館内規則などで原状回復実施について説明しなければいけないわけです。しかし、本件ではそうした資料も存在しませんでした。

 

協会会員のスリーエー・コーポレーションが行ったサポートとその結果

こうした状況を受け、適正化協会は以下の3点をサポートしました。

  1. 情報開示と説明責任の要求
  2. 「原状」の確定
  3. 賃借人の推薦業者による原状回復工事の許可

 

以下、ひとつずつ確認していきましょう。

 

1.情報開示と説明責任の要求

仕上表、図書などの資料がないうえ、見積もり内容が「大体」で、いい加減なものになっていました。そこで原状回復をするための情報開示と、現状の説明責任を果たしてほしい旨を要求しました。

 

2.「原状」の確定

原状回復費・適正化協会と協会員である3ACで宅建士や建築士、電気技士、防災技士、その他設備士の現地調査、諸官庁申請書類の確認を行い、「原状」を確定、エビデンスとしました。

 

3.賃借人の推薦業者による原状回復工事の許可

上記2の確定のエビデンスを提出することでヤマダホームズの技術力、法務力を認めてもらい、「特例として原状回復を賃借人の推薦業者にて実施する」という許可を得ました。

 

1~3のサポートの結果、原状回復費用は1600万円(税別)に抑えることができました。初回見積は2320万円だったので、720万円削減することができたということです。

ちなみに施工は協会会員である(株)エス・ビルド、監理監修は同じく協会会員の3ACが行いました。

 

査定者の所見

協会会員査定員 萩原大巳
ビルの所有権が変わっていたり、フロアの区画変更などが重なると、賃貸人が個々の賃借人の契約内容を把握せず、賃貸人担当者の原状回復の認識が曖昧になってしまっているケースがあります。 株式会社ヤマダホームズ様は自社事業もあって違和感に気づくことができましたが、賃貸人の“言うがまま”に原状回復工事をしてしまうということが多いのです。 今回ご紹介した事例のようにビルオーナーが変わっていたり、見積もりを見て「思ったより高いな」と感じたり、その他疑問点がある場合、まずは原状回復の専門家などに相談してみることをおすすめします。

原状回復費・適正化協会会員

株式会社スリーエー・コーポレーション

査定員 萩原大巳

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