クライアント紹介
株式会社シグナルホールディングスグループ(以下、SHC)はインターネット広告、アドワーズのコンサルディング及び販売促進支援、人材派遣に強みを持つ会社である。グループ会社(株式会社グローバルナビゲート:不動産仲介業)の勧めで難波スカイビルのワンフロアに本社移転を決定した。
RCAA協会に原状回復適正査定と交渉を依頼した経緯
移転元の原状回復見積を指定業者Oファシリティーズ株式会社(以下、OF社)にお願いし、提示された見積は3,250万円!「高い」と思いオフィス移転のPMRに相談した。OF社とC工事解体を借主側業社で実施することを貸主側も承諾していただいた。
原状回復発注期日まで 後10日、C工事を除く原状回復見積は2850 万円。オフィス移転PMR会社(株式会社VIS)から「東京にある一般社団法人RCAA協会にお願いしたら、かなり削減できると思いますよ」とアドバイスをした。
Web検索で問合せ、電話で詳しい説明を聞いた上で原状回復削減コンサルをお願いすることになった。
オフィス移転責任者H様よりヒヤリング
2日後萩原理事が来社して、午前中大阪の協力会社と現地調査、質疑をまとめてOF社、ビル側AM・PM会社(以下、NRP社)とRCAA協会萩原理事と面談した。それからビル側は、ピタッと発注期日で言ってくることはありませんでした。
私は不思議に思い、萩原理事に聞きました。
「なぜ、むこうは萩原理事に発注期日を言ってこないのですか?」
「これはビル側の常套手段、それから上席に相談してますと繰り返すでしょう。それも低姿勢で…業界用語で引き延ばしというんですよ。そしてこれを逆手に取って、貸主を攻めますから」とのことでした。
賃借人の概要
最終合意金額は2,855万円が2,035万円削減額は820万円
クライアント | 株式会社シグナルホールディングス(以下、SHC) |
テナント | 大阪市中央区 EDGE心斎橋ビル |
賃貸借面積 | 928.46㎡/280.86坪 (5階東側、6階倉庫、8階倉庫、11階、12階) |
賃貸人の概要
賃貸人 | MS信託銀行株式会社(以下、MS銀行) |
AM・PM | NRP社 |
BM・指定業者 | OF社 |
実績
協議の結果は、原状回復2,855 万円を2,035万円で合意(ターゲットブライスに未達)
初回見積金額(※工事造作解体廃棄を含む) | 3,250万円 |
再見積(※工事造作解体廃棄を除く) | 2,855万円円 |
再々見積 | 2,350万円 |
査定額(ターゲットプライス) | 1,850万円〜1,980万円 |
合意金額 | 2,035万円 |
削減額 | 820万円 |
削減率 | 29% |
敷金(預託金) | 4,150万円 |
敷金返還額 | 2,115万円 |
※総額表示:千円単位四捨五入
高額な見積もりに対してC工事解体業者に相談…正しい選択?
SHCは、業績向上に伴い同じビル内での増床を繰り返していました。その結果、倉庫も含めると5フロアも多重フロアの区画に入居する状態。立地は御堂筋の一等地、数回の改修工事を実施しており、現在もビルのグレードは高く維持されています。
SHCとしては、このままだとコミュニケーションに問題があると感じ、スタッフの働く環境も重視して、難波のスーパーグレードビルのワンフロアに移転することに決断しました。そして、移転元ビルに対して解約予告を提出しました。
SHCのもとに初回見積が届き、原状回復工事費用の初回見積3,250万円(※造作間仕切りを含む)という高額費用が記載されています。これでは高すぎると感じたSHCのオフィス移転担当者は、造作・什器の買い取りをしている大手業者(株式会社オフィスバスターズ)に相談していました。
しかし、これは一般的に良い選択とは言えません。
なぜなら、C工事解体、C工事弱電など賃借人の資産を賃借人の推薦する業者が施工し、原状回復費を圧縮しようとすることは賃貸人側にとって折込済みだからです。ですから当然、原状回復工事期間前の施工を求められます。そして館内規則によって土日や夜間の工事、警備員立会い、搬出搬入通路養生など、ビル運営ルールを厳守する必要もあります。また、工事に対するビル側の検査も厳しいのが一般的です。
そして最大のリスクは、C工事解体の承諾書がなかなか出てこないという「明渡し遅延リスク」を考慮すると、思うほど価格圧縮ができないというのが現状なのです。「●月●日までに発注を頂けませんと明渡し遅延損害金の対象になります」と低姿勢で圧をかけてきます。また、養生、諸経費などダブル計上となり無駄なコストが生まれるだけでなく、時間的にも工期が厳しくなります。
ビル管理会社へC工事解体、廃棄、買い取りをSHCの用意した業者で解体廃棄することを承諾してもらい、再見積もりをお願いすると、2,855万円(C工事解体を除く総額表示)と提示されました。
これでも高いことに変わりありません。
そこでSHC の担当者はオフィス移転のPM(プロジェクトマネジメント)会社(株式会社VIS)に相談しました。その結果、RCAA協会に査定依頼することになったのです。
指定業者と即効協議・結果査定金額とどかず2,035万円合意!!
RCAA協会会員の株式会社スリーエー・コーポレーション(3AC)が査定をすると、SHCの物件の原状回復費は1,850万円〜1,980万円でした。
再見積もり額は1,000万円も割高だったということです。
原状回復の見積もりについては、建築に関する知識だけでなく、電気、空調、防災なども含めた知識を要するので、非常に専門性が高く、一般の方では見積内容がわかりにくいものになっています。
RCAA協会会員である3ACは査定結果と、「査定額の根拠」を担当役員と担当者に伝えました。SHCの担当者はその説明を理解して頂き、速やかにアドバイザリー契約締結しました。
この時、査定協議を担当した萩原は工程表と見積条件がないことに気づきました。すぐに指定業者に連絡を取り工程表を確認したところ、なんと協議する猶予が10日間しかありませんでした。
工事が開始する一週間前RCAA協会の査定員及び協力業社が午前中に現地調査を行いました。午後は指定業者との協議です。翌日、指定業者から朝一連絡があり、可能な限り費用を抑えた原状回復の見積もりを提示する約束を取り付けることができました。そして提出された費用が再々見積2,350万円です。
RCAA協会の萩原はさらに440万円の値引を要求し、OF社の協議の進め方は信義則に反することを伝えAM・PMのNRP(貸主)に「見積条件、工程表もない原状回復見積は公的には認められない」と伝えて、強行姿勢で圧をかけました。結果、SHCの経営判断によって紛争は避けて、2,035万円で合意することが決まりました。本件は円満合意することになりました。それでも削減額は820万円です
オフィス移転担当者が原状回復適正査定で揃えるべき書類とは?
原状回復は、賃貸借契約書によって「どこまで原状回復をするか明確にする義務」が賃貸人(オーナー)サイドにあります。したがって、オフィス移転が決まった時は下記書類を揃えて確認することが重要なポイントとなります。
上記書類を揃えた上で、原状回復の専門家に査定してもらってはじめて交渉することができます。それ以外のあやふやな情報では交渉のテーブルにすら上がりませんし、基準にもなりません。
今回のケースの場合、SHCのオフィス移転担当者は、最初に解体廃棄買い取りの専門業者に相談していました。これによってC工事分を原状回復費用から除外することはできましたが、RCAA協会ではこうした対応だけで「適正化」とは考えていません。オフィス移転の担当者は、賃貸人、指定業者、AM・PM、解体業者などさまざまな業者と調整業務を行うこととなります。担当者に負荷がかかり調整は遅れていきます。最初から原状回復適正査定(原状回復の可視化資料)があればターゲットプライスも交渉の進め方も解ります、進捗管理もメールでしっかりと把握、それで専門家の能力を有効活用できます。
査定者の所見「カタにはめる」とは?
SHC担当者はオフィス移転の経験がないにも関わらず、大変な努力されました。しかし、すべてのビジネスは、5W1Hを明確にすることが基本です。これは原状回復を含むオフィス移転であっても同様です。
この事例は、まさに時間との戦いでした。今日までに発注合意しないと原状回復工事が終了せず、家賃の倍額請求権の対象になるという状態だったのです。遅延損害金を回避し、なおかつ適正費用まで削減するという難易度の高い協議でした。
したがって、こうしたリスクを低減するためにも担当者はオフィス移転を「最初に誰に相談するか?」これがとても重要事項です。このような状況をつくり出し、発注しなければリスクがあります。これをプロは「型にはめる」と言ってます。
RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション
査定員 萩原大巳