原状回復とは 事業再構築の殿(しんがり)である!!

エイベックススタジオ

エンターテイメント総合事業 国内最大手のエイベックス・マネジメント株式会社。

コロナによる財務損傷のため、20年以上入居していたエンターテイナー育成スタジオを移転することとなった。

しかし、提示されたのは、予想をはるかに上回る原状回復工事の見積金額であった!

 

エイベックスマネジメント

 

クライアントの紹介・経緯

クライアントのエイベックス・マネジメント株式会社は、スタジオの移転のため賃貸人に解約届を提出したところ、1億4850万円という予想をはるかに超えた見積金額が提示された。

どうにか減額できないかと考えるが、デイリーワーク及び移転業務で時間を割けず、ましてや原状回復に関する知識もなく交渉方法もわからない。そこで不動産知識のあるヴォルタマークス合同会社 大内 誉史氏(元役員)に相談。代わりに交渉をお願いしたが大きな減額とはならなかった。その後、大内氏が一般社団法人RCAA協会(原状回復・B工事アドバイザリー協会)ホームページから問い合わせ、協会運営母体の(株)スリーエー・コーポレーションにアドバイザーとして協議に参加していただくようお願いした。

 

賃貸内容

賃借人 エイベックス・マネジメント株式会社(以下、甲という)
賃貸人 株式会社A(以下、乙という)
賃借人アドバイザリー 株式会社スリーエー・コーポレーション(以下、丙という)
賃貸人側 見積作成業者 S株式会社(以下、丁という)
建物名 第10荒井ビル(東京都渋谷区)
使用目的 甲が経営する音楽関連業務に携わるアーティスト及びエンターテイナー育成School
敷金 120,000,000円
賃貸借面積

【地下1階】419.58㎡/126.92坪

【1階】304.47㎡/92.10坪

【2階】348.86㎡/105.53坪

【3階】199.34㎡/60.30坪

【4階】137.87㎡/41.71坪

【計】1410.12㎡/426.56坪

 

交渉の結果(総額表示)

初回見積 148,500,000円(敷金1億2000万円では2580万円の不足)
合意金額 95,000,000円(敷金2500万円返還)
削減額 53,500,000円
削減率 36.03%

 

交渉におけるポイント

敷金1億2000万円はテナントの財産である!

竣工図は貸方基準図書ではない!原状変更図書もなし、これでビル管理をしているのか!?

アスベストの調査、情報開示、説明、対処は誰の責任ですか?

 

(丙)交渉メンバー

リーダー:山田 貴人(丙)

建築担当;西之園 博之(丙)

DX責任者:長坂 正一(丙)

総合監理:RCAA協会 理事長 兼 (株)スリーエー・コーポレーション代表取締役CEO 萩原 大巳

RCAA協会 法務指導弁護士:東京山手法律事務所 野間 啓 先生

本件の概要

専門家による解説  (本件統括 監理監修者 萩原 大巳 リーダー 山田 貴人)

本件は、甲が約20年前に入居した時の状況がわかる原状変更図面、資料が無く、本来であれば上記資料を全て管理していなければならない乙でさえも資料を持っていない状況からの協議スタートでした。

このような状況のため、乙から提示された見積は原状回復ではなく、乙の勝手な都合によるグレードアップのリニューアル工事でした。しかも、甲のアドバイザー 丙同席のもと、乙と面談した際「これ以上交渉してくるのであれば、アスベストの調査、処理費用はテナント側で負担してもらう」と圧力をかけてきました。

2021年4月よりアスベストの法改正があり、建材商品のアスベスト含有率無し、また含有率が少量でもある建材はアスベスト処理を実施すること。

アスベストに関する賃貸物件の全ての責任は賃貸人あると義務付けられました。

問題点の指摘と対応

テナントが入居時に設置した防音壁等の造作物に含まれるアスベストは、当然テナント側で処分する必要がありますが、賃貸人資産となる建物の躯体に含まれるアスベストは、本来賃貸人側で処分する義務があります。

このような件は、本来賃貸借契約の更新時、重要事項説明の際に賃貸人からテナント側にマネジメント業務として説明すべきこと、また原状回復協議の最中に伝えてくることは賃貸人側の法令順守に問題のある行為であり、不信感を抱く原因となります。

なお、テナント側の建材アスベスト含有率の問題は1986年ILO石綿条約により内装建材には使用されておりません。 

甲アドバイザー 丙の建築的な観点、弁護士の法的な観点より甲丙の主張を提示したところ、乙は苦しい立場になり、「原状回復工事は賃借人側で実施しても良い」と返答がありました。

上記は一見、賃貸人が譲歩したように見えますが、明け渡しまで間もないタイミングでのこの返答は、短い期間で工事業者を手配し工事を実施しなければならない、アスベストに次ぐ、賃貸人による第二の圧力でした。(現状:貸方基準図、原状変更図書、情報開示もされていない状況)

しかし丙は、総力を挙げて早急に必要資料の作成、工事業者の手配をし、いつでも工事を開始できる状況まで段取りをし、最終的に賃貸人は観念し、原状回復見合負担金という形で合意することとなりました。

(金銭清算)

初回見積  148,500,000円

合意金額  95,000,000円

削減額      46,900,000円

削減率      36.03%

敷金    120,000,000円

敷金返還額 25,000,000円

という良い形で合意することができました。

 

お客様の声

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弊社が本業で忙しい中、RCAA協会、スリーエー・コーポレーション、弁護士先生が賃貸人の圧力に屈せず、かつスピーディーに交渉し、明け渡しまで間もない短期間で大幅減額していただき大変感謝しております。

(エイベックス・マネジメント株式会社 ユニットリーダー 藤井 宏典 様)

 

専門家コメント

査定員 萩原大巳

萩原 大巳 (Hiromi Hagiwara)

一般社団法人RCAA協会 理事長
【協会会員】株式会社スリーエー・コーポレーション 代表取締役CEO

  • ワークプレイスストラテジスト
  • ファシリティプロジェクトマネージャー

土地建物(以下、「不動産」という)は不動産の流動化、証券化により、賃貸人が数回変更になるケースが多く、本件のケースも所有者移転により賃貸人が変更された。

 

① 敷金1億2000万円はテナントの財産である!

敷金返還については新賃貸人が義務と権利を全て引き継ぎ、賃貸借契約書の内容も全て引き継ぐ法理がある。

敷金返還の賃借人の法的権利は、原状回復義務履行をもって権利が確定する。

② 竣工図は貸方基準図書ではない!原状変更図書もなし、これでビル管理をしているのか!?

前土地所有者が本件のビルを建て、その時の図書が竣工図書である。その後次のテナントに選んでいただけるビルにするため、改修工事を実施した。その改修工事実施図書が貸方基準であるが確認できず、甲の入居工事申請図(原状変更図書)も確認できなかった。

新賃貸人(乙)では今の現状を目視だけでしか確認できないため、次のテナントに選んでいただけるよう環境対応のリニューアル工事を原状回復の名目で甲に見積提示した。

当然、原状回復しようにも原状が誰もわからず、また古いビルの為、電気、空調換気、防災、その他設備の建材も廃番(生産中止)になっており、原状に回復する事は物理上不可能である。

したがって、甲乙丙で法理を基に真摯に話し合う事がビジネスパーソンの基本姿勢ではないだろうか。

③ アスベストの調査、情報開示、説明、対処は誰の責任ですか?

アスベストは、法理において1995年以前の建物は含有率5%未満の建材まで認められていた。1986年ILO石綿条約にて吹き付け作業は禁止となり、実質1986年以降の建材はアスベストが含まれない物がほとんどとなる。

現実として1975年以前の建物には、アスベストが含まれる建材、吹き付けの行われている建物が多く、同年「特定化学物質等障害予防規則の改定」が行われた。

上記の法令に鑑み、6人の有資格者の現地調査の結果、アスベストを含む建材、特に甲の所有物についてアスベストは使用されていないことが判明した。

このような事を、乙が調査を要求、書面に調査結果提出を求めるなど、言語道断である。

乙は建物維持管理の責任を実質放棄している。

 


 

 

 

 

西之園 博之(Hiroyuki Nishinosono)

一般社団法人RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション

  • 建築担当

<ポイント>

    • 仕上表の設備をすべて新規交換する事は原状回復義務を大幅に逸脱している。特に電気・空調・設備を環境対応にする事は、甲によく説明し、甲乙の負担割合を協議することが法令順守である。そのようなことから新規取替の空調、電気、防災、その他設備の負担割合協議を要求することが重要となる。
    • 現状図面、仕様書のない中、設備を全て新規交換する事は原状回復を逸脱している。
    • 乙は、図面等が不備な状況で原状回復工事見積を提示する際、特に電気・空調・設備等の工事コスト高となりやすい項目については甲に丁寧に説明し、双方で協議することも問題解決の一つである。
    • 工事着手前図面(現状図面)及び甲改装竣工図面がなく、現地調査のみで現状を想定し、回復工事を行うのは手間と時間がかかり、原状回復費用高額の要因となる。
    • 貸主、借主双方にとって図面が揃っていることを確認し賃貸借契約締結することが、原状回復工事をスムーズに適正価格で行うポイントである。

 


DX長坂

長坂 正一(Shoichi Nagasaka)

一般社団法人RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション

  • DX(デジタルトランスフォーメーション)責任者

<スタジオ>

甲は防音等を備えた特殊な設備(スタジオ)を造作している。乙から提出された原状回復費用には、甲が造作した諸設備の解体費用に加え、今後新たに入居する新テナントのためのグレードアップ工事であった。

特殊使用はテナントの資産であり、乙が原状回復工事として指定する事は本件の賃貸借契約には記載されていない。

 

<セキュリティー・LANネットワーク、C工事>

甲は光ケーブル、LAN配線を敷設し、また入室管理に伴うセキュリティー設備を入居以降に構築している。

甲に所有権のある造作、諸設備は指定業者がいる場合でも甲で収去解体廃棄する事は甲の当然の権利と思われる。

 


査定員 山田貴人

山田 貴人(Takahito Yamada)

本件プロジェクトリーダー

一般社団法人RCAA協会会員
株式会社スリーエー・コーポレーション

  • 原状回復・B工事査定員
  • リサーチャー
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)担当

最初、乙は甲に敷金では足りない額の原状回復費用を要求してきた。甲が建築、不動産知識が無い事を見越してこのような金額提示をしてきたのではないだろうか?

その後、建築の知識がある甲の元役員で本件をご相談いただいたヴォルタマークス合同会社 大内 誉史様が乙に交渉するも、大幅な減額はできなかった。

コロナ禍では賃貸人、テナント共に財務が損傷し、本件の様なケースが多発している。専門家に相談しテナントの財産である敷金が、いつ、いくら返還されるのかは経営の根幹に関わる問題である。

最終的には敷金が2500万円返還される金額まで削減し甲の負担を軽減することができた。

そもそも今回、乙から提示された見積は原状回復ではなく、新テナントに入ってもらいやすくするようグレードアップ工事の内容だった。

これは建築の観点と法的な観点、両方わかる専門家でないと争点を見出し的確な主張をすることができない。

貸方基準図書が確認できず、甲の入居工事申請図(原状変更図書)も確認できないといういい加減な管理体制にも関わらず、乙は甲にアスベストの調査、処分費用するよう要求してくるという道理がまかり通って良いのか?

 

以上のことから、オフィス、店舗などの賃貸借契約締結時の際には、書類には気をつけなければいけないということを今回の案件で感じたことである。

 

 

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