「借りている事務所を退去することになったのだが、入居時に収めた敷金・保証金の返還についてトラブルになってしまった」というご相談が多く寄せられます。
具体的には、「返還されると思っていた敷金や保証金が1円も返還されない」とか、「敷金・保証金では足りないということで追加料金の支払いを要求されている」といったケースです。
本来はオフィスの退去時に返還されるはずの敷金や保証金。なぜ返還されないという事態が起きるのでしょうか?
実は、原状回復費が大きな鍵を握っているのです。
そもそも敷金、保証金とは何?
敷金(保証金)は、家賃管理費、その他貸主の債権担保として預託する「預託金」です。海外では敷金を「デポジット」といいます。
債権を担保することが目的ならL/C(Letter of Credit:信用状)を使います。米・英・EUでは多額な預託金をする習慣はありません。国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US-GAAP)の会計処理では、デポジット(敷金)は現金預金に計上します。
日本スタイルですと、敷金返還の権利は原状回復義務履行を遂行して、敷金返還請求権が発生します。
拘束されて使えない現預金(敷金)、それが日本式賃貸契約の現実なのです。
原状回復費が敷金・保証金と同額に見積もられるカラクリ
賃貸のオフィスや事務所の場合、敷金・保証金の相場は、賃料の6~12ヶ月分と言われています。ビルのグレードにより預託金(敷金、保証金)は大きく違い変わります。
ポイントは、敷金・保証金はあくまで一時的にビルオーナーに預けているお金であるということです。したがって、敷金や保証金の性格上、契約終了時に、原状回復費と償却費(ない場合もあります)を差し引いた額が返還されるのが普通です。
ところが、相談者の原状回復費の見積もりを拝見すると、敷金・保証金とほぼ同額の見積もりになっています。こうなると当然、敷金・保証金がほとんど返ってきません。
しかし、原状回復費が敷金・保証金と同額になるというのは、少し不自然に感じませんか。
ただ、多くの担当者が「おかしいな」と思っても入居している事務所の賃貸借契約書に、「退去時の原状回復は義務」と書かれているため、おとなしく見積もり通りの金額を支払う(=敷金・保証金の返還はなし)ことを受け入れてしまいます。しかし、本当に受け入れるしかないのでしょうか?
実は、こうしたケースの大半は、ビルオーナーが個人の場合に起きています。オーナーの「一度預かったお金を返還したくない」という意志のあらわれといえるでしょう。特に、数十坪~100坪程度の個人オーナーの物件に非常に多いトラブルです。
原状回復費が敷金・保証金とほぼ同額で見積もられている場合、無理やり帳尻を合わせているケースが珍しくありません。つまり、 本来必要のない工事が入っていたりすることで、高額になっているのです。
※敷金・保証金の違いについてはこちら
敷金・保証金を返還してもらうためにはどうすればいい?
これまで見てきたことからわかるように、敷金・保証金を返還してもらうには原状回復費を減らせばいいのです。
高額な原状回復費が見積もられている場合、オフィスや事務所の借り主(テナント側)に建築や不動産などの知識が少ないことにつけこんでいる可能性があります。本来は行う必要のない工事が見積もりに盛り込まれて高額になっているということもあります。
このほか、複数の下請け・孫請け業者が工事にかかわり、マージンを抜いていく業界特有の重複構造によって、高額になっているという事情もあります。
このような内情を予め知っていれば、余計な工事などを排除した適正な金額がわかり、敷金・保証金がいくらぐらい返還されるのか、正しく把握できます。無駄な工事をカットすれば、当然ながら無駄なコストも抑えられるでしょう。
そうです。原状回復費の見積もりが納得できない時は、鵜呑みにする必要はありません。
貴社が行うべきことは、原状回復費の適正な見積もりを取ることです。
法的根拠に基づいた原状回復適正査定書がなければ、基準がないまま話し合いをすることになってしまいます。
また特に東日本大震災以降、大幅に原状回復工事費が大幅に高騰しており、東京オリンピック誘致が決定してからは、さらに高騰する状況となっています。し、これに伴い、紛争に発展すなるケースが多発していおります。
原状回復費が敷金・保証金と同額でなかったとしても、大きな割合を占めることには変わりません。ですから、原状回復費を削減できれば、返還される敷金・保証金の額も大きくすることができます。