原状回復をめぐるトラブル実例(大型スーパーグレードビル)

【実例】平成27年(2017) 敷金返還請求事件

原告(賃借人):株式会社T  (以下、「甲」という)

被告(賃貸人):M地所(以下、「乙」という)

被告(賃貸人の代理人)ビル運営の代理人:MPM(以下、「丙」という)

原告代理人弁護士:TY法律事務所 代表弁護士 NK先生、担当弁護士 TA先生(以下、「原告代理人」という)

甲は、FX取引のプラットフォームを運営する東証一部上場企業である。役員は財務省出身者が多く、常に安定した実績の金融会社であり、乙及び乙のビル運営の代理人丙は、日本最大の財閥系デベロッパーと、その系列のビル運営、及び建築、設備、請負会社である。 MPビルディングは、乙、丙の本丸である当ビルも超大型スーパーグレードビルであり、2014年施工当初より甲は入居。定期建物賃貸借契約(以下、定借という)の終了の為、再契約はせず、オフィス移転を決定した。(乙より再契約の賃料増額要望) 定借終了に伴い、甲に原状回復義務が発生、乙の代理人である丙から提出された原状回復見積に驚愕。インターネット検索の結果、2社に絞り込み。面談、ヒアリングのうえ、一般社団法人RCAA協会運営母体の(株)スリーエー・コーポレーション(3AC)に業務受託することとなった。

物件名 MPビルディング1501区外
面積 3,648.54㎡/1,103.69坪
住所 東京都千代田区丸の内

業務受託のポイントは下記の通りである。(甲担当責任者H氏)

  1. 目論見書の金額 … 506,217,600円 ➡ 適正費用 324,000,000円の費用根拠と信憑性(原状回復のエビデンス一式)
  2. 実績 … 過去の乙、丙との合意実績の確認
  3. 法令順守 … 弁護士法第72条の完全回避

上記1,2,3が競合他社より勝っており、3ACに受託をお願いした。面談の際、日本を代表する乙、丙に正当な甲の権利を主張することは、甲、及び3ACが一枚岩となり、図書、仕上表、工程表(以下、エビデンスという)を作成し、一緒に闘い抜く覚悟がありませんと324,000,000円、削減額182,217,600円の削減は勝ち取れませんとのことであった。また、1、2回4億5千万前後の費用提示をしているが、納得できないことを、甲と3ACは、乙、丙に明確に伝えること、また、原告代理人に委任し、裁判もいとわずの姿勢で臨むことを、3AC萩原大巳氏、小川友幸氏から言われたことは、今でも記憶に鮮明に残っている。結果、査定額までは削減できず、399,600,000円、削減額106,617,600円削減率21.06%で裁判官のすすめで和解合意となった。決算月をまたぎ、2年間東京地方裁判所建築部会で闘った結果、甲の要求が60%認められ、痛み分けの合意となった。

原状回復工事に関して、3つの問題

  1. 新築ビルで入居、スケルトン入居なのでスケルトンが原状回復ではないのか?
  2. 重層請負構造により、あまりにも高額な原状回復費用、市場の競争原理とはいったい何なのか?
  3. 仮説、建築、電気その他設備に全て現場経費、諸経費が計上され、その上に全体諸経費、管理費を計上、仮設、諸経費割合が35%を超える。

ロジックの構築と協議の結果の和解条件とは?

甲の代理人弁護士、甲の建築、設備、宅建の専門家は、常に2人で協議をおこない、乙、丙は弁護士を含む10人超の専門家集団との協議、紛争であった。正に桶狭間の戦いの裁判ケースである。

  1. 甲は、入居工事全て、乙丙に全面指定とし、一任勘定している。入居の際、スケルトンで入居、甲の要望通りの設計施工を乙丙は実施しており、原状回復においては、スケルトンにした後、貸方基準図書の通り原状回復することを甲乙丙で承諾、合意、捺印している。結果として、原状回復は、貸方基準まで回復する義務がある。入居工事の全面指定工事の単価は、スーパーグレードほど高額であっても、入居工事単価は原状回復工事といえども基準となりうるとの裁判官側専門委員の主張であった。
  2. M地所、MPM、T工務店、大手一部上場電機設備会社、中堅サブコン、実質技能士、専門会社などの重層請負構造による費用の高騰問題については、ビルメンテナンス上、安全安心快適を乙丙は甲、その他テナントに提供することが優先であり、ビル常駐のメンテナンス業者がビルを知り尽くしており、アフターメンテナンスを行うことはビル管法からみて当然である、との厳しい裁判官側の意見であった。
  3. 仮説諸経費の直接工事に対する割合については、甲の主張を全面的に裁判官側は認めた。

結論

上記1,2,3を総合的に判断。甲の主張を60%、乙丙の主張を40%で和解のすすめにより、甲乙丙は合意締結とした。裁判官側も判決を言い渡した場合、公の事実となり、原状回復の囲い込みビジネスモデルが崩壊することを恐れ、和解のすすめとなった。甲は、和解を蹴った場合、乙丙は最高裁まで争うことを想定し、甲の代理人3AC、乙、丙で合意和解とした。

3AC専門家である萩原大巳と小川友幸の見解

  1. 入居工事の全面工事の賃貸人指定制度。入居工事(原状変更)の費用は原状回復工事の基準となるので、移転先B工事は安易に妥協せず、不本意であるが、工期、今後の業務を鑑み発注した旨がわかるメールなどの資料を残す必要を感じた。スケルトン入居については、賃貸借契約書、原状回復、入居工事など詳細に詳しい専門家にチェックを受けることは経営者の義務である。
  2. 重層請負構造は、建築関連七会連合約款によればNGであるが、ビル管法では、安全安心快適が第一である。当初より、原状回復の工事項目、費用、特別損耗の回復方法など、専門家の助言をいただき、契約締結時より詳細を決め、覚書、議事録に残す必要がある。
  3. 見積、諸経費については、甲代理人3ACの専門家の意見が尊重され、21%の削減の成果を得た。

総論・議論

スクラップ&ビルドから、リユース、リサイクルの流れは当然であろうが、大手既得権益者の壁はあまりにも高く厚い。この紛争の経験を生かし、あるべきオフィス移転の姿、第三の道など、オウンドメディアを通じて発信し続けていくことが協会のミッションであると強く認識した。

 

 

本件担当技術者・記事作成者

査定員 萩原大巳

萩原 大巳

RCAA協会 理事長

(株)スリーエー・コーポレーション代表取締役

一級建築施工管理技士

宅地建物取引士

小川友幸

小川 友幸

RCAA協会 理事(建築担当)

一級建築士

管理建築士

城ノ下英茂

城ノ下 英茂

RCAA協会(設備担当査定員)

第一種電気工事士

建築設備士

資産除去債務査定員

お問合せはこちら

コメントは受け付けていません。