原状回復費1,870万円→1,045万 削減率44% 敷金返還は3,595万円
日本においてはオフィスを移転する際に原状回復工事が求められる。これは日本では一般的な賃貸借契約書の常識ともいえる。しかし、その工事内容は賃借人にとって“ブラックボックス”であり、適正とはいえない見積もりが横行しているのが現状である。
コロナ禍の今、オフィスは「集約」から「分散」に向かい、経営者は働き方を見直し「ワークプレイス」を見直している。
そんな経済状況下で、高額な原状回復工事の見積もりには、明らかに法的根拠のない工事項目や、過剰な付随する間接工事などが原状回復見積に算入され紛争が多くなっている。本件の事例もトラブルにこそならなかったが、専門家から見れば理不尽なケースであり、決して珍しいものではない。原状回復特約をチェックして下さい。
そんな混迷の時代、改正民法により原状回復の定義範囲、工事内容の明文化を貸主責任と定めました。民法第621条は原状回復協議の指針となりました。
賃借人の概要
クライアント(借主) | 株式会社コスパクリエーション |
物件 | 東京都新宿区 Aビル |
賃貸借面積 | 2階 957.77㎡/290坪(小数点第一位四捨五入) |
賃貸人の概要
賃貸人 | Aビル株式会社 |
PM(賃貸経営管理業務) BM(ビル管理運営) | K建物総合管理株式会社 |
原状回復協議の結果
1,870万円→1,045万円で合意 削減額825万円 削減率44%
初回見積金額(指定業者) | 1,870万円 |
再見積 | 1,485万円 |
合意金額 | 1,045万円 |
削減額 | 825万円 |
削減率 | 44.1% |
原状回復査定額 | 990万〜1,100万円 |
敷金(デポジット) | 4,640万円 |
敷金返還額 | 3,595万円 |
(総額表示)
見積内容と契約内容(原状回復特約)を照合し問題点を浮き彫りに
借主は、撮影スタジオ兼オフィスとして本件のビルに入居していましたが、コロナ禍でもありオフィス縮小を決断し、杉並区の本社に集約しました。解約届けを賃貸人側へ提出したところ、PM担当の管理会社より届いた見積書の金額は1,870万円でした。
原状回復や移転先のB工事は指定業者制度により工事費高騰問題が多いということは聞いていたが、想像していた以上に高額だったことに借主は驚き、本社移転時のプロジェクトマネージャーに相談しました。すると、原状回復コンサルティングを行っている一般社団法人RCAA協会会員(株)スリーエー・コーポレーション(以下3AC)を紹介してくれました。
さっそく相談してみたところ、たちまち本件での問題点が指摘されました。説明も分かりやすく、法務根拠も明快だったので原状回復適正査定とコンサルティングを依頼することにしました。
3ACが指摘した2つの問題点
- 床の新規貼替、壁・天井の全面塗装、新規ブラインド交換、空調設備の薬品洗浄等が見積もりに算入されていたが、これは契約書及び原状回復特約に記載のない工事であり、すなわち汚れ傷の修繕修復が原状回復義務である。(原状回復の範囲を逸脱 民法第621条)
- 賃貸借契約書の原状回復に関する項目には「賃借人は本貸室内に設置した間仕切り、その他の諸造作設備等を撤去し、破損個所があるときは本貸室を原状に復して賃貸人に明け渡す」という記述しかなく、具体的な工事内容が不明瞭。(新規貼り替えによる通常損耗の負担を借主に負担させる事は違法行為。スタジオエリアは原状変更しているため、特別損耗として原状回復義務を借主負担とする)
法理に基づいた提案で驚きの削減額を実現(民法第621条を考慮要件)
上記の問題点を賃貸人側へ伝え、「本件は賃借人が所有する造作、諸設備を撤去し、特別損耗を修繕・修復のうえ、クリーニングをすることで足りるのではないか」と通知。これを主張するにあたっては確たるエビデンスもありました。実際に原状回復に関する裁判で「天井、ブラインド新規交換、空調の薬品洗浄等は本来、ビル側の資産であり、ビル側で負担すべき工事である」とのリーガルレターを通知した例があります。それは平成25年3月28日東京地裁において原状回復特約で通常損耗を負担させる根拠を争う判例です。また改正民法第621条を考慮要件としました。
これを受け賃貸人側は見積額を約1,045万円に修正し、825万円もの減額が実現しました。賃借人も満足し、円満合意が成立しました。その後、速やかに原状回復費が敷引きされ、敷金3,595万円が返還されました。
クライアントからいただいたコメント
RCAA協会会員である3ACに原状回復適正査定を依頼してから、現地調査とアドバイザーとして協議に参加していただきました。ビル側との面談、金額合意まで短期間で対応していただき、大変感謝しております。また、ここまで大幅に減額していただき大変驚いております。
「賃貸借契約書、原状回復特約で明文化されていない工事を賃借人は費用負担しなくてよい」という、説得力のある論点を見つけてくださったおかげで、時間のない中でも筋の通った主張を展開し、納得のいく金額まで削減することができました。
今回、御社に相談して、本当に良かったと思います。また今後オフィス移転をする際にはご相談させてください。この度は本当にありがとうございました。
(株式会社コスパクリエーション担当者 神田 様)
※その後クライアントの財務顧問、税理士法人チェスター様を紹介していただき原状回復適正査定及び協議を受託しました。
査定者の所見(執筆者 山田 貴人)
多くの賃借人は、賃貸借契約書を読んでも見積を見ても専門用語が理解できません。素人では見積書と照合しても問題があるのかどうか判断できないものです。一部の業者は、これをいいことにグレードアップの見積書を作成したりします。たとえ違和感を持った賃借人が指摘したとしても、百戦錬磨の彼らに丸め込まれてしまいます。
だから原状回復を専門としたアドバイザーが必要とされています。ただし経験と実績に裏打ちされた知見力のあるアドバイザーを見極めることは難しいです。実績豊富な原状回復査定会社に無料査定をお願いして説明を聞き、プロの力量を見極めることをお薦めします。
原状回復・B工事査定員 山田 貴人
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