IT社会、働き方改革によってオフィスという存在も見直される時代になりました。
つまり、会社の事業内容によっては、在宅勤務、テレワーク、ネット会議で十分機能するため、“オフィス”という箱すら不要という時代が到来したのです。
既存の企業のなかには、オフィスを退去するという選択を採るものも増えていくでしょう。そのときに問題となるのが原状回復費用や、敷金が還ってこない、という事態です。
今回ご紹介するIT企業も、まさにそうした問題に直面しました。
物件概要
賃借人 | 株式会社インターワーク |
賃貸人 | ユナイテッド・アーバン投資法人 |
住所 | 東京都港区 パシフィックマークス赤坂見附6階 |
面積 | 144.23㎡/43.6坪 |
ビル管理 | 丸紅リアルエステート・マネジメント株式会社 |
指定業者 | 株式会社クリマテック |
明渡し日 | 2019年5月21日 |
解約予告日 | 2018年12月2日 |
敷金(預託金) | 7,450,296円 |
空家賃が発生して敷金が返還されない !?
株式会社インターワークは、最新テクノロジーをリーズナブルで使いやすく提供するIT紹介サービスを推進する会社です。
現在、アメリカ西海岸を中心にICT技術者はフリーランサーが会社と一定期間契約するスタイルが主流になりつつあり、フリーランサーは会社とアルゴリズム開発でギグしている、という新しい言葉まで生まれてきています。日本においてもこうした波が押し寄せてきており、スタートアップは有能なフリーランサーと“ギグする契約形態”が浸透しつつあります。
株式会社インターワークも在宅勤務、テレワーク、ネット会議を推進する過程で、オフィスから“脱却”することになりました。
賃貸人へ6カ月前に退去予告し、原状回復費の見積もりを依頼したところ、約373万円でした。
問題は、4カ月分の空家賃が発生し、原状回復費用と空家賃が敷金から差し引かれることになり、返還されないというのです。敷金は745万円でしたので、少なくない額です。
株式会社インターワークは、知り合いの会社が一般社団法人RCAA協会(RCAA)に相談して、オフィス退去問題を解決したことがあったという話を思い出し、RCAAに相談することにしました。
原状回復の負担金精算と工事期間の家賃免除で円満合意
RCAAが査定したところ、原状回復費の適正価格は250万円でした。
本件の結果は、原状回復費用は負担金精算というスタイルを適用してもらいました。
家賃については、原状回復の工事期間の家賃免除ということで合意することができました。
原状回復費用については、1カ月分の空家賃を免除してもらえることになったので、250万円まで無理にコストカットするより、I社にメリットがあるため290万円の原状回復費負担金で合意しました(それでも約83万円の削減です)。
これにより、敷金が337万6,240円返還されることになりました。
まとめ
株式会社インターワークのように社員だけでなく、会社も“オフィスに縛られない”時代がこれから増えてくることでしょう。本件のようなケースは多発しており、リアル店舗、本社が本当に必要なのか? という問いや、ネットワーク経済の働き方そのものを見直す時期に全ての企業が直面している時代といえます。
オフィス退去を検討する際は、定期建物賃貸借契約と普通の賃貸借契約の違い、解約条件と解約手続き、また原状回復特約などの契約内容を理解することが重要です。
特に経営者は契約当事者として当然知っておくべき事項ですが、もしも「よくわからない」ということであれば、専門家に相談し、確認しておく必要があるでしょう。