オフィス移転を検討する際、どれくらいの費用がかかるか知りたいですよね。ざっくりとでも分からないと、予算を組むこともできず、実際の移転にも踏み出しにくいものです。
この記事では、オフィス移転に必要な費用の内訳と相場をご紹介いたします。あくまでも目安ですが、オフィス移転を検討する際にご活用ください。
オフィス移転費用の主な内訳と相場
オフィス移転費用は、オフィスの規模や立地、従業員数などによって異なるので、一概に「オフィス移転の相場は○○万円」という言い方はできません。そこで、内訳ごとの相場を挙げていきたいと思います。
オフィス移転にかかる費用には、何があるのでしょう。
A:移転先不動産にかかる費用
- 不動産仲介料 ・・・賃料の1か月分相当(消費税あり)
- 敷金または保証金・・・賃料の6か月~12か月相当分(消費税不要)
預け金なので退去時にすべてまたは一部返金されます。 - 礼金 ・・・建物オーナーに賃料の1か月分相当(消費税あり)
B:引越費用(引越業者の作業員、車料、梱包資材、養生、箱詰め開封等)
※ 搬出・搬入方法や夜間・土日作業などにより金額が変わります。
C:移転先の入居にかかる費用(B工事・C工事はビル建物によって異なります)
- B工事(入居者であるテナントの費用で、ビル側の工事業者で行う)
電気・空調・換気・給排水・防災・防犯・スプリンクラーなど - C工事(入居者であるテナントが自らの費用で自ら工事できる)
設計費・内装・レイアウト間仕切り工事費(パーテーション等)
電話・LAN・光回線など通信工事費用 - 什器・備品購入費用
- ネットワーク・セキュリティ費用
※ 一人当たり10~200万円程度が目安となります。
D:移転元の退去にかかる費用
- 家具什器・その他備品などゴミの廃棄処分 ※リサイクルにより軽減できる場合があります。
- 電気・通信など弱電撤去費用
- 原状回復費用
※ 原状回復費用は、テナント自ら工事が出来る(C工事)とビル側の指定業者が行う工事がありますが、どちらもテナント負担になります。
予算例 (100坪から100坪への移転)
この表は100坪から100坪への移転費用です。あくまで「相場」であり、おおまかな目安です。
ハイグレードオフィスや内装にこだわりたい場合などはさらに高額になる可能性もありますし、業者や契約内容によってはこの相場から外れた金額になる場合も当然あります。ですから上記の内訳と相場は予算を立てる際の参考程度と考えてください。
オフィス移転の場合、どうしても新オフィスに意識が向いてしまうものですが、これまで使っていたオフィスの原状回復工事の費用も重要です。実は、オフィス移転費用の中でも、非常に大きなコストになるのがこの原状回復費なのです。
実際に、オフィス移転を控えた企業様が、慌てて相談に来られるケースがたくさんあります。「原状回復の見積もりがあまりに高くて驚いた!」「こんな金額を請求されるなんて思ってもいなかった!」という驚きの声がたくさん寄せられています。
移転費用の総額は原状回復費で大きく変わる
原状回復とは、店舗やオフィスを借りたとき(入居時)の状態に戻すことをいいます。この原状回復を行う工事が原状回復工事です。
借主(テナント)側が退去日までに原状回復をして返却することが義務づけられています。つまり、オフィス移転において避けて通れない要素といえるでしょう。
賃貸借契約書には「原状に復した上で、本件建物を明け渡す」 「躯体に関するものを除く、壁、天井、床等に対する修理は借主が負担する」など、どのような状態で貸主に返すべきなのか明記されています。
また、原状回復工事は「貸主指定の工事業者に依頼しなければならない」など、借主側に制約のある内容が記載されている場合もあります。
原状回復費用が高額になりがちな一因として、貸主(オーナー)の指定業者が提示してきた見積もり金額が高いか安いのか判断できないことにあります。これは、不動産・建築・法律などの知識がなければ判断しにくいのです。
例えば引越ならば、いくつか業者を呼んで見積もりを取れば、比較して金額とサービス面から自社に最適な業者を判断できると思います。家具や什器の費用も「少し高いからグレードを落とそう」とか「もう少し高くてもいいからデザインのいいものを」などと、コストを簡単に把握できます。
しかし、「原状回復工事」の場合は、見積もりの内容を見ても指定業者1社だけなので高いか安いか、工事範囲や項目が正しいのか判断できません。
ですから、オフィス移転費用の予算を立てようと考えたら、必ず原状回復費に関する理解が必要になるのです。
※オフィス原状回復費の相場は、以下の記事で詳しく紹介していますのでご確認ください。
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オフィス原状回復費(坪単価)の相場はどれくらい?
オフィス移転の際、多くの契約では原状回復が義務付けられており、原状(借りたときの状態)に戻さなくてはいけません。 そこで、原状回復工事の見積もりを取ってみると、あまりに高額で驚くことでしょう。しかも、 ...
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原状回復の相見積をとっても無駄
自分の知り合いの業者に見積もりをとってみた
自分たちの建築内装の知り合いに見積もりを作ってもらいビル側に提出してみたら、「こんなの提示されても指定業者ではないから」「知らない業者では、この建物の事情やグレードに合わないからダメ」。
しかし、その見積業者さんの見積書は、本当にやらなくてはならない原状回復項目なのでしょうか。
解約明け渡し条件や原状回復の定義などを知らずに見積書は作れないのです。
オフィス移転費用を抑えたい!と思ったら
今回の記事をもとに自社のオフィス移転費用の概算を計算してみて「思った以上に費用が高い!」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
もしオフィス移転費用を大きく削減したいのなら、金額の規模が大きな原状回復費にメスを入れることが最も効果的です。
原状回復費が安くなった分を什器や内装などオフィス移転時の別の費用に充当してもいいでしょう。
実は、原状回復工事の費用は適正価格とはいえないケースが非常に多いのです。
または貴社の経営改善や新しい事業へのチャレンジに充てることも考えられます。いずれにせよ、大切な会社のお金ですから ”活きた使い方” をしたいものです。
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オフィスの原状回復費を抑える正しい方法
オフィスを移転する際に不可欠なのが原状回復です。しかし、原状回復工事の見積書を見ると、「高い!」と思う人がほとんどです。 オフィス移転プロジェクトの担当者は、打ち合わせや調整で忙しいもの。そこに高額な ...
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原状回復費の削減には、専門家によるサポートが不可欠です。
とにかく「高い!」とクレームを言ったり、生半可な知識でコストを下げようとしてもあまり成果は望めません。専門知識や業界の慣習などに基づいて動かなければならないのです。
早い段階で専門家に相談して、納得のできるコストでオフィス移転ができることが理想的ではないでしょうか。
RCAA協会理事長 萩原 大巳 コメント
オフィス移転で「確かな実行予算を把握する」「全ての業務を可視化する」が必須条件です。
オフィス移転総額に占める移転元原状回復工事、移転先B工事の費用は、100坪以上のオフィス移転では平均5割を超えるとのデータもあり、指定業者による工事費高騰問題は社会問題に発展しています。
「オフィス実行予算を組めない」「実行予算が意味をなさない」「原状回復費が高すぎて敷金が返還されない」と、当協会に多くの相談があります。
原状回復が国際会計基準(IFRS)で資産負債両計上する会計基準になり、日本会計基準もIFRSに準ずる会計処理になりました。
原状回復費、B工事費の適正な見積が必要となり、従来の業界慣例にとらわれず、オフィス移転の確かな実行予算を組める専門家が必要となりました。なじみのない言葉ですが、米・英・豪では「ワークプレイスストラテジスト」というワークプレイス戦略立案者が活躍しております。
オフィス移転の際は、確かな実行予算を作成し、全ての業務を可視化し、全体を俯瞰してみる専門家が必要不可欠です。